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今回、第一回フィールドワーク(青木ゼミのフィールドワークに学生有志が参加)においては、因島、大三島の水軍の遺蹟と、井伏鱒二が滞在した因島の土井医院などの文学遺跡を見学、第二回(人間文化学科地域文化研修)は能島(のしま)村上氏の遺蹟と、尾道から生口島、伯方島、因島、能島、大島と村上海賊の島城の跡を辿りました。
二回とも、備陽史探訪の会会長の田口義之先生の実地の講義により、当時の地域史の見取り図が頭の中に出来あがりました。二回のフィールドワークによって、芸予諸島と周辺の海域で独自の活動を行った「村上海賊」の歴史の全貌を知ることができました。
村上水軍博物館で展示見学 |
2,島嶼部に跡が残る海賊の城は、14~15世紀に相次いで建築された。(以下、田中謙・大上幹広(村上水軍博物館学芸員著『村上海賊の城』村上海賊魅力発信推進協議会編 による)
・島の城、岬(鼻)の城、海を望む山城など様々な立地の城がある。
・とりわけ小島全体を城郭化したタイプは全国的にも特異である。
・海岸部に最大の特徴がある。
①船だまり(船かくし)がある。
②干満に応じた船の着岸や繋留用の施設(岩礁ピット)を整備している。
③海岸をめぐる通路(海賊テラス)や多目的ヤード(海岸の埋め立て)を整備している。
・島の対岸には「水場」がある。
・土塁や堀切といった城の防御施設は簡素であり、海に対して開放的な構造である。
・海賊の舞台となっていることは文献でわかるが、主戦場は海上であった可能性がある。
・生活の道具が豊富に出土し、とくに能島城の郭では何度も建て替えられた建物群が発見された。
・中国などで生産された陶磁器や、備前焼など国内の流通品が多く出土する。
・村上海賊(島の城)は、合戦の備えである以上に、平時の海上活動の場であり生活の場であった。
3,戦国時代(応仁の乱・1467年~室町幕府滅亡・1568年)になると、近隣の大名との関係を強め、地域の権力者の勢力範囲に取り込まれていった。元々、芸予諸島は小早川家の領地であり、隆景はこの地域の海賊衆を「水軍」として傘下に統合し、それが村上水軍と呼ばれた。
4,豊臣秀吉が天下をとると「海賊禁止令」が出され、水軍は陸地に移動させられ、海賊の城は16世紀末頃に、近世に城郭化された甘崎城を例外として、能島城など多くが廃城となったと考えられる。
5,近世には、大名の船手組として、海上の仕事に携わった。塩飽諸島の水軍は幕府お抱えの船手組となり、朝鮮通信使の護衛などに当たった。毛利家に仕えた水軍は萩藩の船手組となった。
今回のフィールドワークでは、しまなみ海道をバスでめぐり、その沿線の海賊城を遠望するとともに、能島城を眼下に見ながら、大島の水軍関係遺跡群を実地踏査しました。
伯方島と大島の間にある海の難所、宮ノ窪瀬戸に接する小島である能島には、島全体を城郭設備とする能島城跡があります。近年の発掘調査によって、14世紀中ごろからこの地での生活が始まったことがわかったとのことです。ここは、実際に海賊衆が寝泊りをする生活の場であったとのことで、硯や天目茶碗、香炉など文化や教養を示す出土品も出ていると資料にあります。
村上水軍分布図(環境省HP) |
幸賀屋敷跡見学 |
高龍寺門前で集合写真 |
村上義弘の墓前で |
能島村上氏は、三島村上氏(因島村上、来島(くるしま)村上、能島村上)の中で最も強大な勢力を持つと言われた水軍で、戦国時代に因島村上氏が毛利氏に、来島村上氏が伊予河野氏についたのに対し、能島村上氏は独立を保ちました。秀吉が傘下に下ることを命じた際も、これを拒否したとのことです。近年、新資料が発見され、村上水軍の主要家系の一つ、能島(のしま)村上家の十七代当主、村上文朗(ふみお)氏=山口県周防大島町=方で、萩藩主が同家当主に海上警護役の職務継承を認めた江戸期の古文書など未調査の史料約600点が見つかったとのことです。江戸期には、萩藩の船手組として生き延びたことが実証されています。
今回、村上水軍を率いた小早川隆景の天正7年の書簡(本年京都で発見)が、みはら歴史館で展示されているのを同時に見学しました。これは、隆景が水軍を率いて木津川口の合戦に赴いた天正4年の三年後、本能寺の変(天正10年)の3年前の、毛利と織田が対峙する緊迫した情勢を反映する書簡で、興味深いものでした。
みはら歴史館で小早川隆景の書状見学 |
いずれにしろ、海賊衆の城も、中国山地の山城も、今は兵どもが夢の跡です。特に、瀬戸内海を我が物として自由気ままに生きた海賊衆の存在は、近代の日本が失った生き方の一つを強烈に思い起こさせます。海に開かれたこの地で今一度往時の自由闊達さを取り戻したいものです。
学長から一言:昨年から本学が挙げて取り組んでいるブランディング推進のための研究プロジェクトは「瀬戸内の里山・里海学」です。。。今年度は、瀬戸内の生態系の研究が私立大学研究ブランディング事業に採択されましたが、このフィールドワークも素晴らしい「瀬戸内の里山・里海学」ですねッ!次は文系で採択を狙いましょう!!!