2017/10/20

平成29年度第3回福山大学公開講座「絶滅の危機に瀕する備後藺草と『備後表』」を開講!

こんにちは、学長室ブログメンバーのmiuraです。
今回は、平成29年度第3回福山大学公開講座の様子をお伝えしたいと思います。

福山大学公開講座は、福山大学教員の研究成果を地域社会に公開し、社会の人々に生活及び職業上の専門的な知識と一般教養を高める学習機会を提供し、生涯学習の振興と文化的、産業・経済的な発展に寄与する目的で、毎年、9月中旬から10月下旬にかけて5回シリーズで行っています。

(前回までのブログ記事はこちら!: 平成29年度第1回福山大学公開講座を開講!次回は9月30日/「平成29年度第2回福山大学公開講座を開講!次回は10月7日」)

今回の講座は、工学部建築学科佐藤 圭一教授による「絶滅の危機に瀕する備後藺草と『備後表』」です。

講座の様子
皆さんは「備後表」という言葉を聞いたことがありますか?

「備後表」とは、備後地域産の畳表(畳の表面につけるござ)のことで、肥後表(熊本県)やビーグ表(沖縄県)などいくつかの現存産地の表の中でも最高級品として知られているそうです。

ところが現在は後継者不足など様々な理由から、備後地域での藺草栽培はほとんど行われていません。

佐藤教授は備後藺草の継承と保全という観点から、その問題に対し、学生と共に備後藺草を栽培するという実践を通して取り組んでおり、講座ではその経験を交えながら話しました。

また、備後地域で独自に発展した「中継織」という技術についての話もありました。「中継織」とは、比較的短い藺草の穂先を中央で組み合わせて畳表を織る技術のことです。元々は長い藺草で作ったものが高品質とされていたのですが、長い歴史の中で技術や生産性を向上させ、国宝や文化財のための高級品としても用いられるようになったそうです。

実際の藺草を用いながら説明する佐藤教授
この「中継織」の技術も手織り職人の減少と後継者不足が問題となっており、中継表を一般で手に入れるのは非常に困難なのだそうです。

佐藤教授はこの技術の保全・継承にも取り組んでおり、栽培した藺草を用いて学生が実際に中継表を製織し、更にそれを用いた仮設の茶室設計まで行ったそうです。

他にも、現存するものの少ない手織機を図面に残したり、備後表をユネスコ無形文化遺産に登録する活動など、様々な観点から備後表の保全・継承活動に精力的に取り組んでいるそうです。

工学部棟に展示されている仮設和室の前で、
備後藺草と中継表を紹介する建築学科の学生さんたち

余談ですが、ある受講者の方は岡山出身とのことで、その方が幼い頃は近所で藺草栽培が盛んだったそうです。「昔はよくこういう光景を見たんだけどね」と学生が藺草を栽培する様子について、幼少期の思い出を聞かせていただきました。

今回の講義を聞いて、きちんと保全・対策をしなければ間もなく失われてしまうような伝統が、こんなに身近にあるということに驚きました。日本各地にあるこのような貴重な伝統技術に、これからもっと目を向けていきたいですね。


学長から一言:日本の住居といえば、畳、障子、襖、そしてこれからはそこに「こたつ」ですが。。。この捨てがたい空間を守るのもなかなか大変になっているのですねッ!人手をへらし省力化するスマート栽培法の研究も工学部と生命工学部が協力すれば。。。可能かな?!?