2017/09/20

ユニークな生物工学科のカリキュラム2 -植物栽培実習-

こんにちは。学長室ブログメンバーの生物工学科・ワイン醸造所長の吉﨑です。

生物工学科のユニークなカリキュラムの1つとして、「福山大学ワインプロジェクト」の中心的なカリキュラムである“果樹栽培加工実習”を以前に紹介しました。今回はこのような取り組みのベースにもなった、1年次生の”植物栽培実習”を紹介したいと思います。

生物工学科に植物栽培実習が取り入れられたのは今からおよそ10年前とのこと。なぜこのような授業が設けられたかというと、当時ある講義で学生に鳥の絵を描いてもらったところ、何人かのそれには“足が4本”描かれていた(!)ことが発端でした。

ガイダンスでは鍬(くわ)や鋤(すき)の違いなども説明
現代の子供は自然と触れ合う機会が少なく、そこで学ぶはずの様々な事象を知らずに大人になる人が一定数存在するということです。その様な人に遺伝子組換え技術や酵素反応機構といったミクロの世界を学ばせてもまさに「木を見て森を見ず」、近視眼的な人材を育ててしまうことになりかねない、と危惧した訳です。
統計解析に必要な知識なども教えます
では実際の授業がどのように行われているのでしょうか。まず収穫時期などを鑑みて候補を挙げた野菜の中から、栽培してみたいものを選んでもらいます。そこでグループに分かれ、栽培過程に実験的要素を盛り込んでもらいます。例えば「灌水量の多いトマトと少ないトマトで糖度に差が出るか?」と言った具合です。


植物栽培実習は入学後最初に行う授業の1つですから、この共同作業がクラスで打ち解けるのにも一役買っています。アクティブ・ラーニングにより、栽培方法は学生たちが自ら調べながら実践します。教員は聞かれたら答えますが、こちらから細かいことまで指導しません。


植栽が終わったら、しばらくの間授業はありません。水やりや観察当番を決め、グループごとに責任をもって栽培を続けます。天候や学生たちの熱心さにも左右されますが、今年は特に立派なものができました。一例を載せておきます。


収穫したら、報告会が開かれます。グループごとに考えた実験の目的、試験方法、結果などを報告します。今年は「根粒菌による窒素固定を期待して、マメ科植物を交互に植えることで化学肥料を少なくできるか?」なんて生物工学科らしい研究もありました。内容は玉石混交ですが、まず自分たちで考え、それを実践して確かめることに意味があります。


以上が生物工学科に入学して半年、さっそく経験する授業です。着眼点や解析方法など、正直まだまだなので歯がゆいこともありますが、そこはこの後の4年間でしっかり身につけてもらいたいところです。

なおこの授業は通年で、後期はサツマイモの収穫が予定されています。こちらは実験は盛り込まず、単純に実りの秋を楽しんでもらっています。ただ比較的簡単なサツマイモ栽培ですが、昨年は初めて大凶作を経験しました。今年は上手く出来ていると良いですが・・・。

収穫を待つばかりのサツマイモ
追伸、昨年までは「田植え」もこの授業の一環で行ってきました。残念ながら水田の水漏れなどの問題や、より大きなワインプロジェクトを始めたことなどから、今年から田植えは行っていません。しかしこのスピリットは福山大学稲作研究同好会に引き継がれています!



学長から一言:なるほど・・・スマホやバーチャルリアリティの世界から、ちょっと抜け出て、身近な生身の植物に触れたり栽培するところから、生物工学科の授業は始まるのですねッ!納得!!!