2017/04/15

研究へとつながる教育2 瀬戸内海の島々のネズミの研究と教育(生物工学科)

こんにちは、学長室ブログスタッフの生物工学科 吉﨑です。

生物工学科 佐藤淳准教授から先日出版されたばかりの学術論文についての紹介記事が届きました。瀬戸内海の島々のネズミの研究と教育の話です。

******************
こんにちは、生物工学科佐藤です。

数年前に「研究へとつながる教育」というブログを書かせていただきましたが、今回は第2弾です。地域を舞台に、学生と共に展開した研究の紹介をさせていただきます。

それは2009年8月25日(火)のこと。因島の福山大学マリンバイオセンターから白滝山まで向かう途中の森でアカネズミを捕獲しました。研究室の山口泰典教授が「村上太郎」と勝手に(笑)名づけたこのネズミが、研究室で初となる「瀬戸内海の島のネズミ」の記録でした。

因島の村上太郎(アカネズミ)
その後、学生たちと、毎年、瀬戸内海の島々にフィールド調査に出かけ、美しい島(こちらをどうぞ)を見ながら、アカネズミの試料を収集してきました。向島、因島、大三島、伯方島、大島、大崎下島、上蒲刈島、下蒲刈島、そして四国今治市まで採集を続け、歴代の4年次生たちはそれぞれの卒業研究で、少しずつ少しずつ研究を前に進めてきました。

2014年3月大三島 調査風景
2014年3月大三島から見た瀬戸内海
2014年4月伯方島 調査風景
初記録から時がたつのが早いこと早いこと、7年と半年が過ぎてしまいましたが、ついに研究成果が論文として、日本動物学会 英文誌 Zoological Scienceという日本の伝統ある動物学雑誌に掲載されました。しかもなんと、アカネズミの写真が表紙を飾りました!なかなかカッコいいです。

表紙を飾ったアカネズミ(Photo taken by Sato JJ at Mt. Fuji)
論文はこちら:

Sato JJ, Tasaka Y, Tasaka R, Gunji K, Yamamoto Y, Takada Y, Uematsu Y, Sakai E, Tateishi T, and Yamaguchi Y (2017) Effects of isolation by continental islands in the Seto Inland Sea, Japan, on genetic diversity of the large Japanese field mouse, Apodemus speciosus (Rodentia: Muridae), inferred from the mitochondrial Dloop region. Zoological Science 34 (2): 112-121.(本研究は、住友財団基礎科学研究助成、およびグリーンサイエンス研究センター研究プロジェクト助成からサポートを受けました。)

http://www.bioone.org/doi/abs/10.2108/zs160113

さて、その内容を少しだけ紹介させてください。

これまで動物の絶滅の多くは島で起きたことが知られています。瀬戸内海の島々を舞台とすることで、絶滅のメカニズムを探ることができないだろうかと考えたのが研究のきっかけです。この研究では、ミトコンドリアDNA上にあるDloopと呼ばれる領域に着目して、それぞれの島のアカネズミの集団の遺伝的多様性を調べてみました。すると、本州や四国と比較して、どの島の集団においても遺伝的多様性が低いということがわかりました。つまり、島の集団では、近親交配の影響がより強く出る可能性があるのです。

また、それぞれの島の間で、アカネズミの集団は遺伝的に分化していることがわかりました。わかりにくい表現ですね。つまり、ある島で検出されたDNAのタイプが他の島で検出されることがなかったということです。瀬戸内海の島が形成されたのは、おおよそ8000年前であると言われています。アカネズミの1世代を1年と仮定すると、隔離されてから8000世代経過したことになります。1世代20-30年のヒトに当てはめてみると、ヒトにおける16万~24万年に相当することがわかります。つまり、瀬戸内海の島々のアカネズミには、世界中のヒトの間に見られる程度の違いがあってもおかしくないのです。それにしても、航海が盛んであり、ある時代には海賊たちも行き来したこの瀬戸内海において、島のネズミの遺伝的分化が維持されているということは驚きでした。森に適応し、人について回らない本種の特徴であると思います。

さらに、この研究では、瀬戸内海の島の形成史に関わる知見も得られました。検出されたDNA塩基配列の関係性を調べてみると、瀬戸内海の島々のアカネズミは、四国よりも本州のアカネズミに近縁であることが示唆されました。このことは、現在の来島海峡により四国が先に分離したことを意味します。氷河期には豊予川という川がここを流れていたといわれています。きっとそういった過去の地形の影響が、現在の島のアカネズミのDNA上に残されたのでしょう。「生き物のDNAを調べて、地史を知る」。ロマンありますよね?


この研究で用いられた知識や技術は全て以下の講義や実習で学ぶものです。本研究に関わった4年次生たちも皆これらを習得してきました。研究と聞くと難しそうという感覚が先行してしまいますが、意外に近いところにあるのです。学生の皆さん、地域の研究成果を臆せず世界に発信していきましょう。

1年次
里山概論

2年次
地球環境科学
保全生物学(旧 環境保全・法規)

3年次
環境ゲノム学(旧 環境バイオ製品)
生物多様性実習(旧 生物環境実験+フィールド調査実習)
http://www.fukuyama-u.ac.jp/biological-eng/entry-2338.html
バイオ情報処理演習
生物多様性実習の最後に遺伝的多様性についてみんなで議論
アクティブラーニング!
里山の豊かな中国地方、里海のふるさと瀬戸内海、そして数多くの島々、ここ福山を中心に据える瀬戸内には、他に類を見ない特徴的な自然環境が溢れています。この地域でしかできないことを突き詰めていくことで、瀬戸内の自然環境から得た研究成果を世界に発信しながら、地域の発展に貢献することを目指しています。最近の福山大学 里山・里海プロジェクトに関する活動はこちらhttp://blog.fuext.fukuyama-u.ac.jp/2017/03/blog-post_86.html

学長から一言:アカネズミくん、こんにちは。。。興味津々のデータを提供してくれて、ありがとう。。。それにしても、学術雑誌の表紙を飾ったアカネズミくんはイケメン!!!ひょっとして、女性のアカネズミさん?!?