2013/10/08

研究へとつながる教育

こんにちは。ブログスタッフのさとうです。

最近、福山大学を舞台にしたアカネズミという動物の論文が日本哺乳類学会誌 Mammal Studyに受理されましたので、紹介したいと思います。

本研究テーマは、平成20年から始まった生物工学科の新カリキュラムの環境系の教育が実った一つの形です。教育のための教育を行わず、あえて最先端の研究テーマを掲げて、学生たちと共に考えてきたことが良い結果につながりました。学生たちの努力をたたえたいと思います。

福山大学で捕獲したアカネズミ

昨今、メディアでも生物多様性という言葉が頻繁に出てくるようになりました。その生物多様性を支えるそれぞれの“種”の絶滅に遺伝的多様性の低下が関わっているのではないかと考えられています。つまり集団の中に似たもの同士が多くなると集団の存続ができない状況に陥るということです。

いつ遺伝的多様性が低下するのでしょうか?最大の原因は、集団が周りの集団から隔離されて、集団内の個体の数が減ることであると考えられています。

生物集団が隔離されると絶滅する?

福山大学を上から眺めてみると、建物やグラウンドなどが作られたことで、キャンパス内に隔離された多くの孤立林が存在することがわかります。はたして、そこに住むアカネズミ集団の遺伝的多様性は低下しているのでしょうか?

生物工学科の4年生が3年がかりでミトコンドリアDNAの多様性を調べたところ、外縁部の森林地帯の集団の遺伝的多様性は非常に高く、内部に隔離された中央部1(田んぼと女子寮の近くの林)と中央部2(15号館南側の林)の集団の遺伝的多様性は低いということが明らかとなりました。

このことは数十年という非常に短い隔離であっても遺伝的多様性は低下しうるということを意味します。開発を行う際には生物種の存続に影響を与えぬように十分に配慮すべきであるということがわかりますね。これからは野生生物と共生する福山大学を目指さなければなりません。

孤立林の遺伝的多様性は低い!

さて、これらの結果を出した4年生たちはどのような教育プログラムを歩んだのでしょうか?この研究に必要な知識・技術は以下の通りで、それを習得できる講義・実習をその後ろのカッコに記してみました。

知識
1.生物多様性の基礎(2年次 環境保全・法規)
2.DNA塩基配列決定の理論(3年次 環境バイオ製品)

技術
1.哺乳類の採集と標本作成(2年次 フィールド調査実習)
2.組織からのDNAの抽出と特定DNA領域の塩基配列の決定(3年次 生物環境実験)
3.遺伝的多様性を評価する解析手法(3年次 バイオ情報処理演習)

このように2年次で研究意義の説明を開始し、早くから目的意識を持ってこれらの基礎的な知識と技術を身に着けることが大切だと思っています。自ら高いモチベーションを持って学んでほしいのです。

フィールド調査実習でトラップを設置する様子
小型ネズミ用シャーマントラップ
生物環境実験でDNAを扱う実験中
卒業研究発表会での様子

実習の風景については以下のサイトでも見ることができます。
フィールド調査実習 [2011] [2012]
生物環境実験 [2011]


福山大学は生物多様性の宝庫。哺乳類だけを見ても、ネズミもいれば、タヌキやアナグマもいます。そしてテンちゃんも。面白い研究への入り口は実はすぐ近くにあるようです!


学長から一言:学生のアクティブ・ラーニングが、研究にまで昇華し、ハイレベルの学術雑誌にその成果が発表されました!! それにしても、、アカネズミのかわいいこと!