2016/12/19

機械システム工学科 – 自動車交通安全の卒業研究が最終段階に!

新しく学長室ブログメンバーに加わった、機械システム工学科の内田です。今日は、私が担当している「自動車環境工学研究室」の学部4年次生の卒業研究の一部を紹介します。

福山大学では、交通安全に関する広島県警察との共同研究を昨年秋から行っていますが、当研究室ではドライビングシミュレータの応用を中心に、この共同研究に参加しています。


今年の卒業研究のテーマの一つは、安全運転訓練システムの開発です。近年、高齢者のドライバーが増加していますが、高齢になるほど運動能力や注意能力が低下するとされているため、高齢者などの運転訓練に役立つような教育システムを開発しています。スピードを落とさずに他の車両を追い越すと、車の陰から歩行者が飛び出すなど、ひやりとするシーンが自動的に現れるプログラムをドライビングシミュレータに組み込んでいます。

停止中のバスを追い越すと...目の前に子供が!

ところで高齢ドライバーは、仕事もリタイヤしていたりして、比較的自宅に近い範囲で運転する人が多いと考えられますが、そうしたドライバーには、見知らぬ風景の訓練システムよりも、やはり自宅付近の風景を再現した訓練システムのほうが、教育の効果が高まるでしょう。そこで現在は、個々のドライバーに、日常の運転シーンの映像を提供するための技術について研究しています。

どうすればそれが実現できるか試行錯誤しましたが、なんとかインターネットからの情報を駆使して、任意の場所の街並みをほぼそのままドライビングシミュレータ内に再現する方法を見つけることができました。下の写真は倉敷市内の一区画の再現モデルですが、実物に近いリアルな映像を実現できています。

倉敷駅北側付近の街並みのモデルです

上のモデルをほとんど独力で作成した内田直章君の所感:
「この研究では、道路環境の地域性を見出すことに苦労しましたが、その甲斐あって、高齢ドライバーなどが運転しそうな住宅地を見つけ、モデル化することができました。依然として無くならない交通事故を無くすためには、新しい交通安全対策が必要だと考えています。」



卒業研究の第2のテーマは、福山大学の地元である福山市西部地域の交通安全方策の研究です。昨年度より、この地区で最も交通事故の多い神島橋西詰交差点をドライビングシミュレータ内に再現して、道路形状の問題点や改善策を探っています。下の画像はモデルを上空方向から見たもので、手前が松永方面、奥が福山市中心部、中央奥近くの橋が神島橋(川は芦田川)、左斜め下に伸びる国道2号線との接続点が神島橋西詰交差点です。


今年の研究テーマでは、ちょっと不思議な現象について調べてみました。一説によると、神島橋交差点を通過するとき、走行スピードが速いほど、また夕方や夜間など暗い状態の時ほど、橋の入り口が狭く感じるというのです。そこでこのことを、ドライビングシミュレータで昼間や夕方など時間帯を変えながら実験してみると、確かにそのとおりであることを示す実験結果が得られました。

現在は、より基礎的な実験で、この現象が神島橋に限らず一般的に言えることなのかどうかを確かめているところです。左右に赤と青の色のついた眼鏡で立体映像を見るアナグリフの手法を用いて、映像の暗さや動くスピードが変わったときに、道幅の感覚がどう変化するかを調べています。実験条件ごとに異なる64種類の映像を切り替えながら行う、ちょっと大変な実験です。

赤青眼鏡をかけると、この映像が立体的に見えます

この研究テーマを担当している木佐彰利君の談:
「ドライビングシミュレータ実験のためのモデル作成は、時間がかかり、根気のいる仕事です。シミュレータと実際の車には運転感覚が異なる面もあるので、来年度この研究を引き継ぐ後輩には、そうした細かい点にも注意して研究を行ってほしいと思います。」



内田君と木佐君の二人は、今年9月に開催された「交通安全シンポジウム@福山大学」で、研究の中間結果を発表し、広島県警察や国土交通省の出席者から高い評価を得ました。来年2月の卒業研究論文提出と卒業研究発表会を控えて、今、卒業研究はラストスパートに入っていますが、9月時点よりもさらに完成度の高い研究成果がまとまることを期待しています。


学長から一言:内田先生とゼミ生の皆さん、ドライビングシミュレータ使ってこんな実験をしているのですねッ! 文句なしに、面白くて、胸ワクワクです!!!成果に期待していま~す!!!