2016/12/06

人間文化学部・青木研究室の活動「宮沢賢治の世界」セミナーをのぞいてみました~~~

こんにちは。学長室ブロガーのAIです。

11月26日、福山大学宮地茂記念館で「宮沢賢治における文学と視覚表現」というセミナーが開催されました。宮沢賢治というと、童話や詩で有名な作家ですね。「銀河鉄道の夜..ジョバンニ..」とか「雨ニモマケズ、風ニモマケズ...」など、一度は耳にしたことがありませんか? 私は理系人間で、文学を熟読する習慣はあまりありませんが、たぶん小学生のころ、この詩を読んだと思います。「雨ニモマケズ..」のフレーズは強く心に残っています。少し辛い時などおもわず口ずさんでがんばったような記憶もあります。

セミナーは11/26(土)、11/27(日)両日開催されました。フライヤーに「どなたでもどうぞ。決してご遠慮はいりません。」と書かれていましたので、文学鑑賞に程遠い私も、日曜日に参加してみました。

 


まず、梅花女子大学名誉教授の谷悦子先生が、「まど・みちおの絵画と詩-無意識の基層から現れるもの-」について基調講演をされました。「まど・みちお」さんは、私は初めて聞くお名前ですが、「ぞうさん」の詩(抽象画もあり)で有名な詩人さんだそうです。

お勤めをして50才から創作活動に専念された(私にとっては)異色の文学者で、数多くの絵画も作っており、谷先生によりますと、彼の絵画は、孤独な幼年期の影響が出ており、不安感が強く現れていたが、究極的には宇宙と一体化するような独自の表現になっていったということです。そのような絵画作成を通じて、「まど・みちお」独自の内面を包括する宇宙に通じた詩を完成していったとか。。。思想はちょっとわかりにくかったですが、シュールな世界として楽しめました。宮沢賢治と文学活動期が重なっており、共通の世界感をもつのかもしれません。

谷先生「まど・みちお」への思い

プログラム、資料

宮沢賢治も絵画を残しています。基調講演に引き続いて、谷先生を交えて福山大学人間文化学科の秋枝(青木)美保教授がコーディネーターを務め、美術作家の李 豪哲(リ ホチョル)氏、鞆の津ミュージアム学芸員の津口在五氏、そして福山大学メディア・映像学科の阿部 純講師と安田 暁准教授の面々が、パネルディスカッションで、宮沢賢治の絵画について各々の専門的立場からの紹介と討論がありました。そのなかで、「日輪と山」、「月夜のでんしんばしら」などをはじめて見ました。とってもstrangeでしたが、不思議に美しいと感じました。これが、「美しいバランスをもった宇宙」と感じられる世界なのでしょうか。秋枝(青木)教授は、「絵画(視覚表現)と詩、童話(言語表現)の間になんらかのつながりや関係性があるか」と問題提起しました。私にとってはこれまでに聞いたこともないようなややこしい討論があって、谷先生が、結局大切なものは、人にとっての表現行為の根源は「内部に何があるか」ということなのだろう、ということだったような、(「アツコの知らない世界」でした。)。秋枝(青木)教授に添削してもらおうと思います。
「視覚表現と言語表現」パネルディスカッション
 
                                詩人の絵画                   詩人の絵画 

秋枝(青木)教授からコメント
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 絵画表現と言語表現との関係性について、新たな発見に至ったシンポジウムでした。特に、二人の詩人が新たな言語表現を生み出す前に、絵画でそれを表す段階があったという共通性を見いだせたことです。ただ、それがどのうように結びつくのかについて言葉にすることは困難であり、さらに追及をしていきたいと思います。

 福山大学宮沢賢治研究会では、それを議論してきました。私は文学研究の立場から、二つの異なる領域の表現の関係性について言葉にしようとしてきましたが、それは常に言葉に出来ないことを言葉にしていくぎりぎりの挑戦であり、常に他の研究者から批判を受けていました。そのせめぎ合いの中で、それでもその問題を言葉にできたらと考えています。
 
この研究会では、阿部講師がメディア論の立場から、美学理論的な立場から津口在五先生が客観性を重んじつつ、文学研究の主観性を批判する立場にありました。安田准教授、李 豪哲氏は創作家の立場から、新しい視点で二人の詩人の表現について切り込んで行きました。
 谷先生は文学研究の王道を行かれており、会が終了した後も、パネラーとの「場外乱闘」が続いていました。文学研究は、やはり主観から始まり、作家・作品という特殊を扱う研究ですので、一般論には収まらず、客観性を超えていくことになります。そのあたりの立場の違いが最後までありましたが、そのせめぎ合いの中で新しい表現が生まれていくと考えます。今後も研究会を続けていきたいと思っています。今回は一つの成果を示すことが出来る良い機会になりました。
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(ふ~~~むむむ。)
また、このセミナーには、もうひとつ楽しいことがありました。主催者のなかに、「ふくやま宮沢賢治を読む会」の皆さまがいらっしゃって、その方々と文学を読むことについて少しお話できたことです。同会は、宮沢賢治をひたすら読む会だということです。皆さん、いきいきとされていまして、宮沢賢治の大ファンなんですね。どこかなんだか少しきっぷの良い会員の方が、セミナーの後、「やっぱ、谷先生は奥が深いねっ!」とおっしゃっていました。...私の脳宇宙のもやもやは、そのきっぷの良さで吹き飛んでいきました。


学長から一言:人間文化学部人間文化学科教授で図書館長でもある青木美保教授は文学者としては秋枝を名乗られますが。。。今回のこの学長室ブログは私にとっても。。。ふ~~~むむむ。