2016/12/16

福山大学 特別教養講座 SATOUMI(里海) ~ローカルからグローバルへ~

こんにちは、学長室ブログスタッフの海洋生物科学科 Kenji♪ です。

12月12日(月)10:30より、大学会館において特別教養講座「里海 -SATOUMI- 今、中四国の宝 “ 瀬戸内海 ” を知ろう!」が行われました。その様子について、司会進行を担当した生物工学科の佐藤准教授から報告してもらいます。

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こんにちは、生物工学科の佐藤です。今回の特別教養講座には“里海”を学ぶ上で、これ以上ない先生お二方にお越しいただきました。

まずは、岡山県の日生で30年以上にわたりアマモ場の再生に取り組まれてこられたNPO法人里海づくり研究会議 事務局長 田中丈裕 先生。そしてもう一人は、里海資本論という本の著者としても知られる井上恭介 先生です。

講演会の後半で対談されるお二人の講師の先生
まずは、講演に先立ちまして、私の方から、本学が全学的に行っている研究プロジェクトである「瀬戸内の里山・里海学~生態系、資源利用、経済循環、そして文化~」について概要を紹介させていただきました。

福山大学が里山と里海を学ぶ上で非常に良い場所にあること、自然共生と地方創生という二つの課題を同時に解決するためには里山と里海を学際的に研究する必要があること、里山・里海研究プロジェクトでは本学の誰もが貢献できること、の3つを強調させていただきました。

福山大学のみなさん、一緒に研究しましょう。

全学研究プロジェクトの説明(生物工学科 佐藤准教授)
さて、本題の講演です・・・

田中丈裕先生からは、里海の活動のトップランナーである岡山県 日生を舞台に行われたアマモ場の再生についての紹介がありました。アマモ場には多くの生物が生息できることや、環境浄化機能があることなど海洋生態系における重要な役割があることをわかりやすく説明していただきました。

また、アマモ場の減少とアマモ場再生事業による復活、そしてその後の漁獲量の増加など日生のアマモ場における歴史的変遷をご紹介いただき、アマモ場の保全が、海と共に生きるうえで重要であることがわかりました。

さらに、漁師と市民との連携による里海づくり、流れ藻の除去などを通した小学生の教育など、アマモ場を中心とした幅広い活動のご紹介があり、里海社会をつくるための基礎と、未来の里海像について語っていただきました。

田中丈裕先生 ご講演の様子1
田中丈裕先生 ご講演の様子2
引き続き、井上恭介先生にもご登壇いただき、対談形式で講演会が進みました。

挨拶をされる井上恭介 先生

対談では、里海という言葉を知らない人が多いけれども、今やSATOUMIという言葉として世界に広がりを見せていることの説明がありました。里海は瀬戸内海で生まれた言葉で、日本発の言葉で、西洋にはない発想なのです。最初にヨーロッパの学会で、里海の概念の紹介がなされた時に、演者は「お前は漁師の召使いか?」と罵倒されたのだそうです。しかし、今や、そのヨーロッパで里海の概念が広く支持されるようになってきたとのことです。

対談開始
トークの間に映像でフランスの研究者が持つ里海への印象の紹介がありましたが、「里海にはサウンドだけで充分なインパクトがある」、「西洋には自然に手を加えることで応えてくれるという発想がない」、「日本には人と自然が支え合っている共生の観点がある」ということが語られていました。

西洋にはない発想。砂漠の民と森の民の違いによるのでしょうか? たびたびおこる災害のために私たち日本人が持つ自然に対するおそれのせいでしょうか? 私たち日本人には自然を支配するのではなく、共生しようという自然な感覚が根付いているのだと思います。里海や里山と通して、わたしたち日本人にできること、そして世界に示すことのできることは多そうですね。

対談中の田中丈裕先生
会場に質問を投げかける井上恭介 先生
最後に、質問タイムでは、経済学者が里海・里山の研究に参入するに当たり、マネー資本主義を中心的に考えていかなければならず、里海・里山資本主義と一見合わないところが悩ましいところであるとの質問がありました。

それについては、両者は対立構造にはなく、むしろ里海・里山の活動の中で、マネー資本主義についても考えていかなければならず、マネー資本主義と里海・里山資本主義との共生が必要であるとの返答がありました。また、日生のアマモ場の直接的な減少の理由はとの質問に、干拓の影響が大きいとのご返答でした。

会場からの質問に答える二人の先生

ローカルからグローバルへ。
里海と里山を学ぶ上で最高の舞台にある福山大学が本テーマの下で新しい社会を構築するための研究を行うことは、全国、そして世界において同様の課題を抱える地域のためにもなりそうです。本学学生のみなさん、是非、遠くを見据えて地域の課題の解決に没頭しましょう。そうすればきっと世界の何かが変わるはず。

田中先生と井上先生には、身近で、かつ普遍的な里海について、大変興味深いご講演をしていただきましたこと感謝申し上げます。また、このような企画を大学セミナーという形で実現していただきましたNHK広島放送局の皆様にも感謝申し上げます。ありがとうございました。
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ふたたび、海洋生物科学科の Kenji♪ です。
今回の講演内容は、いま私たち福山大学の教員と学生が一丸となって取り組んでいるプロジェクトに深く通ずるものでした。

田中先生のご講演で示された一文・・・「太く、長く、滑らかな物質循環の実現」。
この循環の中で、われわれは自然との共存共栄を模索しなければなりません。
自然と人が支えあっている・・・

この「共生」の姿こそ、世界に誇れる Nippon の「里山・里海」であるということを、ツヨク感じました。

「SATOUMI」


この言葉は、瀬戸内海から生まれた Nippon 発の Global なメッセージなのです!!


学長から一言:昨年度末から準備に入って、来年度はいよいよ本格的に展開しようとしている、福山大学あげての研究プロジェクト「瀬戸内の里山・里海学~生態系、資源利用、経済循環、そして文化」の意味づけを深めてくれた、そして私たちを元気づけてくれた教養講座でした!田中先生、井上先生、ありがとうございました!