2017/11/21

今年度もコンケン大学(タイ)薬学生の実務実習を支援!

こんにちは、薬学部の学長室ブログメンバーGoです。
薬学部 杉原教授より、コンケン大学薬学生の実務実習についての報告です。

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タイの首都バンコクから飛行機で北東に1時間ほどにあるコンケン市から、コンケン大学薬学部6年生2名、Ms. Jiramars Kajuysang(ニックネーム Grace)、Ms. Thanapanramon Phadungkit(Venus)が来日し、9月18日(月)から10月27日(金)までの期間、福山近郊の施設で実務実習を受けました。コンケン大学生の本学への来校は今年度で4回目になります。今回も松田学長や鶴田薬学部長が学生達を暖かく迎えました(写真1, 2)。

写真1 学長室を訪問

写真2 薬学部長室を訪問
本学薬学部は、コンケン大学生の実務実習全般を支援し、実習シラバスの作成や協力施設との調整等をおこないました。実務実習の内容は、日本の優れた医療現場を見聞すると同時に、本学学生との交流を図り、本学学生にとっても貴重な体験の機会となるように検討しました。

コンケン大学生の授業への参加に際しては、山下 純 准教授など薬学部の教員による協力がありました。客員教授の菅奈奈美先生の医療コミュニケーションの授業で、本学の学生は、「相手に合わせる気遣い」をテーマとして、コンケン大学生との交流を通して学修しました。本学学生の多くが語学の壁を高く感じているようでしたが、積極的に話かけてくれる学生や気遣ってくれる学生もおり、医療コミュニケーションの授業がとてもよい国際交流の場となりました(写真3-1, 3-2)。コンケン大学では英語による授業がおこなわれているため、コンケン大学生は流暢に英語を話すことができます。入学時は英語での授業についていくのが大変で、母国語での補習授業にも出席したそうですが、卒業年次になると高い語学力が身に付いており、海外での実務実習が可能となるレベルに達するようです。英語の修得は、学修の可能性や将来の選択肢を広げる上からも重要であると思いました。

写真3-1 医療コミュニケーション授業

写真3-2 医療コミュニケーション授業
セルフメディケーションの演習では、瀬尾講師が、タイでも対策が必要とされている慢性閉塞性肺疾患(COPD)や耐糖能異常の簡易スクリーニング方法について紹介し、学生自らがセルフチェックを行いました。また、高機能患者シミュレータに、COPD患者、低血糖や高齢者の状態を再現させて、その状態をアセスメントする学修もおこないました(写真4, 5)。

写真4 セルフメディケーションの演習

写真5 高機能患者シミュレータを使った演習
学外研修では、4ヶ所の地域薬局と2ヶ所の病院、福山市保健所ならびに福山市社会福祉協議会のご協力を頂きました(写真6-8)。特に今回は病院長のご厚意により、JA尾道総合病院で最も長く学修させていただき、薬剤部だけでなく、様々な診療科での薬剤師の活動や手術室やICU等の見学実習、地域薬局と病院薬剤部との薬薬連携などを学修することができ、充実した内容となりました。

写真6 基幹病院薬剤部での見学実習

写真7 健康サポートを実施している薬局施設での学修

写真8 保健所施設の見学
福山すこやかセンターの敷地の一角にある、夜間だけ開いている福山夜間成人診療所の前で。
隣接して小児夜間診療所もある。
ハートビル法に基づいて設計されている福山すこやかセンターを、社会福祉協議会やボランティアの方が案内してくださいました。障害者も使いやすいように施設内の随所でおこなわれている工夫を学修しました。
その他、コンケン大学生たちは、地域薬局の施設で開催された研修認定薬剤師制度対象研修会の講師を務め、タイの薬学教育や薬剤師の業務について紹介してくれました(写真9)。日本とタイでは薬剤師の役割に大きな相違はありませんが、医療制度や社会的な環境の違いから、タイでは日本以上に薬剤師の活動の領域が広いという印象があります。その一つとして、処方箋がなくても、タイの地域薬局では医療用医薬品を地域住民に対して薬剤師の判断により提供できるという点が挙げられます。日本でも医療用医薬品が処方箋なしで購入できるOTC薬、いわゆるスイッチOTC薬への移行が進んでいるところですが、課題が多く、遅々とした現状にあります。講演会に参加した薬剤師の方々から、いろいろな質問が寄せられ、タイの状況は日本での将来の薬剤師の役割を考える参考になったようでした。

写真9 研修会でタイの薬学教育や薬剤師の役割を紹介
写真10 大学祭前日の餅つき大会
最終日は大学祭の前日に当たり、餅つき大会に本学学生達と一緒に参加しました(写真10)。タイにももち米はあるそうですが、杵でついて餅にする習慣はなく、日本の伝統行事を体験する機会になりました。学生達と一緒に避難訓練に参加した後、学生主催のオープンセミナーやさよならパーティーで本学学生と和やかに楽しく交流しました(写真11, 12)。医療コミュニケーションの授業で親しくなった本学学生も参加してくれました。


写真11 学生主催のオープンセミナー

写真12 さよならパーティー
滞在期間中の天候ですが、コンケン大学生が到着した9月18日は台風18号の影響で大荒れの天候でした。さらに、台風21号の影響で福山市主催の“健康ふくやま21フェスティバル2016”への参加が中止となりました。帰国日の10月28日は沖縄沖に発生した台風の影響を受けて低気圧が停滞し悪天候となりました。台風による影響に加えて、週末もほとんどが雨で、天候に恵まれない実習期間でした。それでも各地に出かけ、休日は日本の観光を楽しんでいました。平和学習として訪れた原爆ドームと平和資料館は、工事中のため一部の見学だけになりましたが、原爆の悲惨さに強く心を揺さぶられたようで、たいへん長い時間をかけて展示資料を閲覧していました。

コンケン大学生達は、6週間の実務実習を無事に終了し、タイに帰国しました。多くの方々のご協力により、充実した実習を受けることができました。ホスピタリティに溢れた温かいご指導やご厚情に深く感謝いたします。本学の薬学生にとりましては、海外の薬学生と触れ合う貴重な機会になりました。また、タイの薬学教育を通して、優れた英語力や高いコミュニケーション力、しっかりとした薬学の知識を修得しているコンケン大学の学生達から、良い刺激を受ける機会になりました。

薬学部 教授 杉原成美


学長から一言:毎回、素朴な雰囲気の、とてもしっかりした学生さんが来られますね。。。親日家、新福山家になって、帰っていただいているようです。。。一緒に学んだ薬学部生の皆さん、将来どこかで遭遇しますよ!?!