2016/05/31

大学生の地域調査:社長インタビュー

学長室ブログメンバーの張 楓経済学部 税務会計学科)です。このたび、私が所属する税務会計学科では、「地域調査」の授業の一環として、工場見学と学生による社長インタビューを実施しました。以下では、その様子をご紹介します。

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「地域調査」は経済学部税務会計学科において2012年度から開講されており、今年で5年目となります。その目的は、福山・尾道・府中・三原を中心とする備後地域の経済・社会の過去・現在・未来に関する疑問を、学生自身による学外訪問調査を通じて解決することにあります。学生を主体とする演習形式をとっており、事前学習や訪問調査、発表、討論を実施することにより、地域への関心を高め、専門科目への橋渡しとしても期待されています。

2016年度前期の「地域調査」の一環として、511日に工場見学を実施しました。見学先は広島県府中市に本社がある高橋工芸(株)です。同社は1960創業以来、半世紀以上にわたり「高級婚礼家具」の産地として知られる府中市で家具製造を続けています。

今回、4名の学生(うち3留学生)が初めての工場見学に参加し、また高橋正美社長(66歳)にインタビューを行いました。
 
高橋社長(中央)と学生たち

自然と調和する素敵なギャラリー

ショールームにて新製品に見入る学生たち

ショールームにて新製品の説明を聞く学生たち
  
椅子の裏も丁寧に仕上げられていることに驚く学生たち
 ・創業から現在までの経営理念について
 高橋工芸は家具職人の父親が創業したことから、以前は「書斎家具作り一筋、技術の高橋工芸」という経営理念掲げられていました。しかし、1982社長就任を機に「豊かな生活空間を考える高橋工芸」へと大きく変えました。

「良いモノを作れば売れる」という戦後高度経済成長の時代過ぎました。そのため「モノを売る」より「豊かな空間を売る」という経営理念に大きく舵を切ったのです。会社近くにある「ギャラリー」も、その発想にもとづき2010年にオープンしたものです。

社長インタビューの様子①
・高橋工芸の家具の価値はどこにありますか
そうですね。以前の家具は結婚の時に買うことが多く、生活の中重要な意味を持ちました。そして、使えば使うほど、様々な記憶や思い出が込められるようになり、家具の価値も増していきました。高橋工芸もそうした記憶や思い出を大事にしながら、よい家具づくりを目指しています。高橋工芸が手掛けるオリジナル商品の再生箪笥(たんす)はその1つです。デザイン・価格・作りのすべてにおいて、ヨーロッパでも高評価をいただいています。


・高橋工芸の差別化戦略について
戦後高度経済成長期における府中家具高級婚礼セットの全盛期を迎えていましたが、高橋工芸はその時から箪笥ではなく、「夜具入れ」や「木製冷蔵庫」を経て書棚や机を手掛けていました(夜具=布団・毛布などの総称。寝具)。

当初から、府中産地では「異端児」的な存在でした。他人と違うことに挑戦することモットーとしていました30年前府中には家具メーカーが70社もありましたが、今では20社に減りました。このような厳しい競争のなかで高橋工芸が生き残れたのは、結局、他の会社と違った道を選んで、差別化したことではないかと思います。

2006年に青山にあるインテリアショップ「AREA」とのコラボを始め、現在は月2千万円以上の家具が売れています。また2010年に「ギャラリー」をオープンし、家具や陶芸展、ライブを開いたりしています。さらに2013年に府中の松創と新プロジェクト「MATSUSO-T」を立ち上げて、ヨーロッパ各地の見本市に出品しています。その一環として製作された家具は201415年度に2年連続のグッドデザイン賞を受賞しました

学生たちにとって初めての工場見学
・クルーザーの内装を手掛けるようになった経緯
トヨタのクルーザー事業の担当者が高橋工芸に6千万円のクルーザーの内装をやってみないか、と持ちかけてきたのがきっかけでした。若い社員が非常に興味を持ちまして、ぜひやってみようということで手掛け始め、現在に至っています。

・今後クルーザー内装事業拡大の可能性
これ以上、拡大するつもりはありません。高橋工芸の規模では月に数隻程度が限界ですので、今より需要が増えたら、この事業から撤退するつもりでいます。高橋工芸とトヨタはあくまでも、共にモノづくりを行う仲間で、下請けの関係ではありません。クルーザーの内装以外にも、ザ・リッツ・カールトンの結婚式場のテーブルも手掛けました。トヨタのクルーザーと同じように量産するのではなく、あくまでも一品受注生産が中心となります。

生産工程についての説明を聞き入る学生たち
・高橋社長の会社経営において大事なものについて(王さんからの質問)
大事なもの3つあります。まず、社員の生活を守ることです自分自身の生活より社員たちの生活をもっと豊かにしたいです。それができれば、一番幸せなことです。次に、地域の人に喜んでもらうことです。最後、家具によって人々の生活空間をもっと豊かにしたいですね。

社長インタビューの様子②
・木工業界を取り巻く雇用状況と高橋工芸が求める人材像(三宅さんからの質問)
木工業界を志望する若者は多くありません。主に後継者不足によ同業者廃業しています

高橋工芸が求める人材は木が好きで、人生を楽しめる人ですね。最近、2人入社してきました。1人は20代で元々建築会社の現場監督の人で、うちのHPを見てぜひ働かせてくださいと来ました。もう1人は40代で、元々地元企業に勤めていた人ですが、高橋工芸の海外展開に興味を持って飛び込んできました。


学長から一言:このブログからだけでも、とても勉強になりました。。。「『モノを売る』より『豊かな空間を売る』という経営理念に大きく舵を切った」というのも、とても印象的です。。。もっと多くの学生に参加してほしかったですね~。