2014/10/10

第三回教養講座が行なわれました

 本日、第三回教養講座が、内閣官房参与で前ユネスコ特命全権大使、福山大学客員教授でもある木曽功氏を招き、「ユネスコとユネスコ世界遺産条約」と題して行なわれました。

 国連機関の一つであるユネスコは1946年に設立され、日本は1951年に加盟しています。ユネスコは文化や学術、教育、科学を通じた世界平和の構築を目的としており、ユネスコ憲章の前文は「戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中にこそ平和のとりでを築かなければならない。」と、文化の価値と理念を説いています。
 ユネスコといえば、演題にもある「世界遺産」が良く知られていますが、活動の大部分は「教育」に関する内容だそうです。異なる文化や風習を正しく理解する基礎となる教育は、平和の構築には不可欠と言えるでしょう。また現在では、多用な文化や文明を生み出してきた人間だけではなく、周囲の環境も含めた持続可能な社会を実現する為の教育にも力を入れているそうです。

 講演の後半では、世界遺産に登録されたばかりの富岡製糸場などを例に、世界遺産を決める仕組みが話題になりました。
 世界遺産条約を締結している国が候補を出し、様々な調査や審査を受けた後に、世界遺産委員会の承認を得て、始めて世界遺産にとう録されるそうです。広島県には、厳島神社と原爆ドームの2つの世界遺産がありますが、世界遺産がどのようにして決まるのかを知っている人は少ないのではないでしょうか?
現在は、八幡製鉄所など、幕末から明治にかけての産業革命遺産の登録に向けた活動が進んでいるそうです。世界遺産の数は凡そ1000、今後も増やしていくのか、あるいは数に制限をもうけるのか 、といった議論もなされているとのことでした。
 また、世界遺産登録条件の第一は「顕著な普遍的価値を有すること」ですが、この判断基準についても様々な議論があるそうです。このほか、後世に伝えることを目的の一つとしている為、管理体制が重視されています。保全が適切ではない場合、世界遺産からの登録が抹消されることもあり、開発と保全のバランスが今後の課題となっているようです。

 世界遺産であるか否かにかかわらず、現在まで伝えられてきた文化や文化財には、ほかに代えることのできない無限の価値があるはずです。様々な文化に触れる機会が増えるこれからの季節ですが、世界遺産から地域に伝わる文化まで、どのように守っていくべきなのか、あるいは開発と保存の在り方について、改めて考えさせれられる講演でした。


学長から一言:「戦争は人の心の中で生まれるのだから・・・」というユネスコ憲章の前文は、最近のぎすぎす、殺伐、混沌とした世界情勢のもとでは、一段と心に響きますね!