生物工学科は「瀬戸内の里山からはじまる食と環境のバイオサイエンス」というテーマの下で教育・研究を行っています。瀬戸内海と中国山地という接近した海と山に挟まれた非常に狭い場所に住んでいる私たちは、自然共生社会の構築を考える上でとても良い場所にいることになります(こちらの学長室ブログも見てね)。
今日は、生物工学科の2つの柱の1つである環境教育の成果が、日本哺乳類学会論文賞という研究の形で評価されたことを報告したいと思います。ブログスタッフの受賞なので仕方がありませんが、自画自賛です。。。
佐藤准教授が日本哺乳類学会論文賞受賞 |
生物工学科では、主に2つの生物多様性教育を行っています。1つは、広大なキャンパスを利用して昆虫から脊椎動物、そして植物までの生物多様性に触れ、生態系の仕組みを理解することです。
学内で昆虫を捕獲し異なる環境間で昆虫相を比較 |
ICT教室を使った実習成果発表の様子 |
いつもこのアカネズミで、すみません。 |
2011年 哺乳類学会 宮崎大会で発表する川上君(当時4年生) |
授賞式の様子(札幌コンベンションセンターにて) |
【論文詳細】
Sato JJ, Kawakami T, Tasaka Y, Tamenishi M, Yamaguchi Y (2014) A few decades of habitat fragmentation has reduced population genetic diversity: A case study of landscape genetics of the large Japanese field mouse, Apodemus speciosus. Mammal Study 39 (1): 1-10.
【推薦理由】
本論文は,アカネズミの個体群において,小規模な人為的生息地分断が,30年ほどの短期間で遺伝的多様性の喪失を招く可能性を遺伝子解析により示したものである.著者らは,福山大学周辺の森林におけるアカネズミのミトコンドリアDNAの変異を調査し,キャンパス内の二つの個体群でハプロタイプ多様性の喪失が生じていること,キャンパス内外の個体群間に遺伝的分化が生じていることを明らかにし,過去の大学キャンパスの整備に伴う森林の分断による隔離のみがこれを説明できると考察している.本論文は,注目を浴びやすい大規模な開発だけでなく,身近で小規模な人為改変が短時間で野生動物に影響を与えている可能性を指摘した点で,保全生物学上重要な成果であるだけでなく,それをオーソドクスな手法と身近な題材で明らかにしており,研究における着想の重要性を示している点で,教育的な価値も高いと判断される.また,論文の構成,文章表現,論理展開の質も高く,日本哺乳類学会論文賞にふさわしい論文であると判断する.
学長から一言:佐藤先生、おめでとうございます。。。キャンパス内に新しい建物を建てるたびに、そこにもともと住んでいる住人には迷惑をかけている。。。ヒトは罪深い。。。グスッ!