今回は、人間文化学部 文化フォーラム10周年記念企画 「文化における視覚表現と言語表現」第3回の模様について、青木教授からの報告です。
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7月23日(土)に、文化フォーラム第3回「詩人が絵を描くとき─宮沢賢治、まど・みちおの比較─」をふくやま文学館セミナー室で開催しました。
近年、文学者と美術の関係について、関心が高まっています。2013年には東京で「夏目漱石の美術世界展」が、2015年から今夏にかけて「画家の詩、詩人の画」展が全国で開催されました。さらに、今年は4月に東京での川端康成のコレクション展を皮切りに、今まさにひろしま美術館で開催中(9月3日~10月16日)です。文学と絵画は表現者の中でどのような関係を持っているのでしょうか。今回の文化フォーラムでは、その謎に迫りました。
左から、青木教授、安田准教授、津口氏、阿部講師 |
福山大学には、3年前から自然発生的に生まれた「福山大学宮沢賢治研究会」があり、一ヶ月に一度、賢治の作品について語り合ってきました。文化フォーラム第3回は、そのメンバー(津口在五氏・鞆の津ミュージアム学芸員・本学非常勤講師、李豪哲氏・美術作家、人間文化学科青木とメディア・映像学科・安田暁准教授、同阿部純講師)が、賢治の絵画について、まど・みちおの絵画と比較しながら語るシンポジウムの形式で行いました。
今年は宮沢賢治生誕120年の年ですが、宮沢賢治も視覚的表現に特徴のある作家です。「クラムボンは笑ったよ」でよく知られている「やまなし」は、川の中に住んでいる蟹の兄弟の物語を、まるで水中カメラで映したかのように描いています。賢治も数は少ないながら、絵を残しています。今回のテーマは、賢治の文学と絵画の関係を、特に賢治の絵を分析しながら考えてみようというものでした。
賢治よりさらに多くの絵を残した詩人にまど・みちおがあります。今回は、賢治の絵とまど・みちおの絵を比較しながら、二人の詩人における絵画の表現の特徴とそれぞれの文学の関係を追求するべく、試みました。
最初にコーディネーターの青木(宮沢賢治研究者)から、世界の文化史における文学と絵画の表現の関わりについておおまかな歴史を紹介して、問題提起を行いました。
その後、まず美術作家の李豪哲氏(フィリピンからスカイプで参加)と本学メディア・映像学科の安田暁准教授(専門・現代美術制作)から、まど・みちおと賢治 の絵の特徴について、絵画の形式的な面から話してもらいました。
その結果、まど・みちおの絵画は、まさしく絵を描く意志が一貫して感じられる抽象画であり、優れた芸術であること、これに対して、賢治の絵は、見たものを書きはなしたという印象が強く、スケッチというのがふさわしいということでした。それぞれの絵の性格の違いの分析は、美術家ならではのもので新鮮なものでした。
次に、賢治の絵は、これまでどのように解釈されてきたのかという点から、本学メディア・映像学科の阿部純講師(専門・メディア研究)が、賢治の絵画について触れた文章・論文について、その傾向を分析しました。その結果、絵について研究者たちが、それぞれの思いから「読み込みたい宮沢賢治像」を読み取ろうとしていることなどが指摘されました。
賢治よりさらに多くの絵を残した詩人にまど・みちおがあります。今回は、賢治の絵とまど・みちおの絵を比較しながら、二人の詩人における絵画の表現の特徴とそれぞれの文学の関係を追求するべく、試みました。
最初にコーディネーターの青木(宮沢賢治研究者)から、世界の文化史における文学と絵画の表現の関わりについておおまかな歴史を紹介して、問題提起を行いました。
その後、まず美術作家の李豪哲氏(フィリピンからスカイプで参加)と本学メディア・映像学科の安田暁准教授(専門・現代美術制作)から、まど・みちおと賢治 の絵の特徴について、絵画の形式的な面から話してもらいました。
その結果、まど・みちおの絵画は、まさしく絵を描く意志が一貫して感じられる抽象画であり、優れた芸術であること、これに対して、賢治の絵は、見たものを書きはなしたという印象が強く、スケッチというのがふさわしいということでした。それぞれの絵の性格の違いの分析は、美術家ならではのもので新鮮なものでした。
次に、賢治の絵は、これまでどのように解釈されてきたのかという点から、本学メディア・映像学科の阿部純講師(専門・メディア研究)が、賢治の絵画について触れた文章・論文について、その傾向を分析しました。その結果、絵について研究者たちが、それぞれの思いから「読み込みたい宮沢賢治像」を読み取ろうとしていることなどが指摘されました。
今回のシンポジウムでは、このようなこれまでの賢治の絵画についての見方に対して、絵画という観点から新たな賢治の姿を見いだしたいという思いがありました。そこで、津口在五氏(鞆の津ミュージアム 学芸員、本学非常勤講師)が、賢治の教材絵図─賢治がお百姓に科学的な知識を伝えるために作成した図─を取り上げて、現代のアウトサイダーアートと並べながら、賢治の表現の原点が生活と芸術の一体化にあるという仮説を提示しました。
今回のテーマについての皆さんの関心は高く、約40名の参加がありました。アンケートからは、「大変おもしろいこころみで、よい企画であると想う。今後も刺激的な内容を企画して下さい」という激励の言葉もいただきました。テーマがおもしろい反面、聞き慣れない話題も多かったせいか、わかりづらさもあったようです。
今回の発表はさらに内容を発展させて、11月26日・27日(9:30~12:30)に実施される「宮沢賢治学会福山セミナー2016」(宮地茂記念館9Fホール)の2日目に、まど・みちおの研究家、谷悦子先生をお招きして実施するシンポジウム「宮沢賢治の絵画に見る表現意識 ─詩人「まど・みちお」の絵画と詩の表現との比較を通して」につなげていきます。ぜひ、こちらにもご来場下さい。
※ 写真は、中国新聞エリア通信員 粟村真理子氏撮影によるものです。
【予告】
さて、文化フォーラム第4回は、下記の通り実施されます。文化フォーラムとしては、初めての心理学科教員の講演です。担当の宮崎講師は、当該テーマに関連して、ユニ・チャーム株式会社との共同研究も進めているそうです。こちらへもどうぞご参加下さい。
10月1日(土)14:00~16:00 ふくやま文学館 セミナー室
演題 「マスクを着用することが顔の魅力に及ぼす影響」
講師 本学心理学科講師 宮崎 由樹
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