昨年末の12月に、広島県安芸郡府中町に本社を置く大手自動車部品メーカー「デルタ工業株式会社」と、品質を高めるための製品設計法に関する共同研究を開始しました。そしてその初会合として、1月16日(火)、17日(水)の両日、デルタ工業本社で「品質工学講習会」を開催しました。約30人の技術者のみなさんが出席し、講師は私、内田が務めました。
ところで「品質」とは何でしょうか。例えばスマートホンを購入するとき、「某社製のスマホには、ときどき通話音がよく聞こえないものが混じっている。それに、地域によってはつながりにくい。」といった評判の機種があったとしたら、わざわざそれを選ぶ人はいないでしょう。「期待される機能や性能が、当たりはずれなく、いつでもどこでも同じように継続して発揮される」こと、それが「品質が高い」ということです。
講習会では、競技用紙飛行機のシミュレーションソフト(※)を用いて、「風速によらず長い距離を飛ばせる紙飛行機の設計」の演習を行いました。紙飛行機の飛び方はなかなか複雑で、飛距離は風の影響を大きく受けるので、どのような風速条件でもよく飛ぶ紙飛行機の設計は難しい問題です(†)。
紙飛行機シミュレーション画面の例 紙飛行機の飛行は複雑で、風の影響を大きく受けます |
元の設計の紙飛行機の飛距離 風速により、飛距離が大きな影響を受けています (初速度とは、紙飛行機を投げた直後の速度のことです) |
設計変更した紙飛行機の飛距離 どの風速条件でも、安定した飛距離が得られています |
デルタ工業の主力製品である自動車用シートには、耐久性、安全性、乗心地、座り心地、肌触り、美観などいろいろな面での品質が関係します。講習会では、品質工学に基づく安全予測や感性評価の話もしました。今後は、実際の製品作りに直結する技術課題について共同研究してゆく予定です。挑戦しがいのある難題がいろいろ出てくると思いますが、品質工学を応用してうまく解決していけたらと、今後の進展を楽しみにしています。課題の一部は学生の卒業研究にも取り入れる予定です。
※紙飛行機シミュレーションとしてインターネットで公開されているPPSim(桝岡秀昭「PPSim Ver1.3 紙飛行機用フライトシミュレータ」)を使用しています。
†上記ソフトでシミュレーションを行った感想です。私自身は、競技用紙飛行機の製作経験はありません。
学長から一言:紙飛行機は子どもの頃によく作ってとばしっこしましたが、奥が深いし、なかなか良い教材になるのですねッ!共同研究の成果が上がることと、そのことが学生の課題解決力の増進につながることを期待していま~す!!!