2018/03/13

生物工学科 佐藤准教授 オーストラリアから近況報告2

こんにちは、生物工学科 学長室ブログスタッフ吉﨑です。

現在、アデレード大学(オーストラリア 南オーストラリア州)に長期滞在中の佐藤淳准教授から近況報告 第2弾が届きましたのでお伝えします。第1弾はこちら

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こんにちは、オーストラリア アデレードに滞在中の生物工学科の佐藤です。こちらに来て3か月が経過したところで近況報告をしましたので、その後の3か月について振り返り、2度目の近況報告をしたいと思います。

1.アデレードでの出来事
12月から2月まではオーストラリアでは夏で、大変暑い日々を過ごしました。湿度が低いため日陰に入ると大分楽なのですが(北海道を暑くした感じでしょうか)、それでも人生で初めて40℃を超える日を経験しました。最近は朝晩涼しくなってきており、これから雨が多く寒い日がやってきます。この1年は暖かい日ばかりを経験しましたが(日本春夏→オーストラリア春夏)、次の1年は寒い日ばかりを過ごすことになります(オーストラリア秋冬→日本秋冬)。
アデレード市内 ビクトリアスクエア この日は40℃越え
最初の3か月は、理論の勉強や実験の準備をしていましたが、ようやく実験をはじめることができました。まずは実験室のルールや消耗品の購入方法などを細かいことを理解しました。ここでは古代DNAの研究が盛んですので、わずかなDNAサンプルの混入(コンタミネーションと言います)も許されません。実験室では必ずゴム手袋をして終わったらその部屋で捨てるとか、試薬を調製する部屋にはDNAを持ち込まない(部屋に入る順序がある)など厳しいルールがありました。

ともかく久しぶりに実験を行うことができとてもうれしく思いました。実験は今のところ順調です。先日、福山大学に導入されました次世代シークエンサーMiSeqを用いて、“ある哺乳類”の進化生物学的研究を行っています(今はヒミツ)。これからビッグデータをコンピュータで料理するところです。楽しみです。
アデレード大学の実験室
さて、やっとお会いすることができました。実は、この留学先を考える際に、まず最初に下の写真のKen P. Aplin博士に連絡を取り、アデレード大学を紹介していただきました。Aplin博士は私の恩師の旧友であり、ラットをはじめ、オーストラリア、東南アジア、パプアニューギニアなどの哺乳類の系統分類学的な研究を広く行っております。2005年の国際会議で初めてお会いしました。その時に発表を聞いていただき、「論文読んだよ」と声をかけていただいたのを今でも覚えております。論文を書くことの重要性を感じた瞬間でした。今回アデレードに来られるということでどうしても会いたかったのですが、3年ぶりにお会いすることができ大変うれしく思いました。
Aplin博士と私
2.Chowillaでのフィールド調査
2月末に、アデレードの北東約300㎞のところにあるChowillaでコウモリのフィールド調査を行いました。半乾燥地帯のChowillaでは、オーストラリアならではの動植物や景観に触れることができ、とても楽しみました。
果てしなく続く道 この先に調査地
Chowilla Station ここに宿泊
Chowilla Stationの側を流れるMurray River ワニはいません
2晩泊りましたが、連日夜中の1時2時までフィールド調査は続きました。ハープトラップとミストトラップという罠でコウモリを捕獲し、体長、体重、性別などの生物学的な記録をとり、DNAの分析用に翼の一部の組織を採取しました。その後、野外に放ち、コウモリの“声”の分析を行いました。それにしても、それはそれはコウモリの採れること採れること、ひっきりなしにデータの取得をしていました。一緒にいた南オーストラリア博物館の研究者は「この前、一晩で600匹捕獲して、朝の7時まで調査してたよー、はははー」と言っていました。コウモリ研究者はタフです。私は狂犬病の予防接種をしていなかったので、今回は触らずに見るだけでした。
Lesser long-eared bat Nyctophilus geoffroyi
Gould's wattled bat Chalinolobus gouldii
コウモリの他にも多くの野生動物に出会うことができました。下の3枚目のスライドにエミューが写っていますが、朝の7時ころで、朝日が広大なブッシュをきれいに照らし、至る所でカンガルーがぴょんぴょん跳ねているというとても幻想的な景観でした。ハリモグラも見ることができました。忘れられない風景になりそうです。
Goanna うーん、種名がわからない
Eastern grey kangaroo Macropus giganteus
Emu Dromaius novaehollandiae
3.オーストラリア国立大学での実験と研究発表
次世代シークエンサーを利用した新しい手法を学びに、キャンベラにありますオーストラリア国立大学(Australian National University; 通称ANU)に3週間滞在しました(この原稿執筆中はまだ滞在しています)。キャンベラはオーストラリアの首都ですが、人口35万人強と福山市よりも少なく、町は落ち着いた雰囲気があり勉強するにはとても良い環境にあります。
実験室はアデレード大学とは異なり、建物が新しいせいもあって、モダンです。オフィスもとてもオープンで、いたるところで壁にサインペンで文字を書くことができ、どこでもディスカッションできる雰囲気があります。福山大学では、工学部新棟のような雰囲気でしょうか。こういった職場の雰囲気を感じることができたこともよかったと思います。明るくオープンな教育・研究環境は良いなと感じました。
実験中の私
さて、ANUでは研究発表をするチャンスに恵まれました。Craig Moritz教授の研究室のセミナーで「Molecular Phylogenetics and Conservation Genetics of Small Eutherian Mammals (Carnivora and Rodentia)」というタイトルで30分だけ話をさせていただきました。Moritz教授はオーストラリアの哺乳類のゲノム研究プロジェクトをまとめられており、今回多くの議論をすることができ大変光栄でした。異なるグループの哺乳類は地質学的に同じような時代に多様化したことがDNAの研究でも報告されており、オーストラリアと日本にも共通の課題があります。一方、日本はオーストラリアの20分の1の面積しか持たず、人口が5倍も多い。そして資源はオーストラリアと比較してずいぶんと限られています。こうした状況を考えると、やはり日本においては「共生」という言葉が重要な意味を持っていると感じました。はい、福山大学ブランディング研究のページへGO。
セミナーで研究発表
オーストラリア生活も半分が過ぎました。おかげさまで何事もなく研究に集中させていただいております。福山や日本が恋しいと感じたことは不思議なくらいにまったくもってありません(笑)。研究三昧でうらやましいという言葉をいろいろなところからいただきますが、私は福山でも研究三昧です。学生と研究ができないのが少し寂しいですね。残り5か月半ほどですが、走る速度を緩めず、何事も無駄にせず、次の研究ステージの土台を作りたいと思います。あぁ学びたいことが多すぎる。。。


学長から一言:佐藤さん、3ヶ月ぶりのお便り、ありがとうございました。。。ワクワク感が伝わってきますよ!!!高校生の皆さん、このブログ読んでいかがですか?高校とはちょっと違った雰囲気、感覚、教師、。。。大学の一面です!