2013/07/21

ロボコミュニケーション社会創造プロジェクト ~ シャンテ君誕生!

こんにちは。 “ロボットとは何ぞや”の思索に耽る、電子・ロボット工学科MGです。

“ロボット”とは、カレル・チャペックの戯曲「R・U・R」にでてくる人間型機械の総称であり、チェコ語で「賦役」「労働」を意味する言葉が語源となっていることはあまりにも有名です。われわれ人間の代わりにやっかいなことを片付けてくれるものがいたらなぁ、なんていう都合のいい夢想を古今東西の人々は常々していたのでしょう。

21世紀も13年目の現在、技術の発展によってロボットは身近な存在となりました。同時に、人々がロボットに求めているものも徐々に変化しているようです。ロボットは人間の代わりに働くだけでなく、ほかの機械と違い人の注目を集めること、人との親和性の高さや人を癒してくれるセラピー効果を持つことなどが指摘されています。

ロボットのもつ動作と機能を使い、人間に癒しをもたらし、人間関係を円滑にする,そんな能力を「ロボコミュニケーション」と名付け、ロボットが人間社会に参加したとき作り出される新たなコミュニケーション社会を研究するプロジェクトが福山大学で行われています。
それが「ロボコミュニケーション社会創造プロジェクト」であり、工学部電子・ロボット工学科、人間文化学部人間文化学科、心理学科、メディア情報学科の学部学科横断で行われる総合大学ならではの強みを活かしたプロジェクトなのです。そして、このプロジェクトは学外の企業、NPO法人とも協力し、社会との緊密なつながりを持った活動となっています。昨年の4月から本格的な活動を開始し、ゆっくりではありますが、徐々に成果を上げつつあります。今回は、このプロジェクトのこれまでの歩みをご紹介したいと思います。

あっ、その前に、このプロジェクトで活躍するロボットの名前は「シャンテ」くんです。みなさん、お見知りおきの程、お願い申し上げます。


■ 2012年6月レストランで実験を行いました
カフェレストラン・ラコントル(http://hiroshima-rencontre.jimdo.com/)での公開実験


 
 
昨年6月に広島市中区のカフェレストラン Recontre(ラコントル) で行われたロボットによる接客の公開実験の模様です。ロボットのプラットフォームは市販されているものなのですが、声、しゃべる内容、動きは当学科でプログラミングし、通信機能と足腰のモータなども強化され、「シャンテ」くんとして誕生しました。レストランという場所で実際にロボットによる言葉の発声とデモンストレーションを行い、顧客の方々の感想を収集することを目的としました。


 
「シャンテ」くんは特定のことばに対応して応答、動きができるようにプログラミングされています。レストランのテーブル席辺りにワゴンに乗せられた「シャンテ」くんが待機しており「こんにちは」「わ~すてき!!」「あ~疲れた、どっこいしょ」等の言葉を発声することができます。お客さんに話しかけてもらい、様々なパフォーマンスを行いました。
 
アンケート結果より,ラジオ体操やダンスを踊ったのが面白い、場の雰囲気がよくなる、癒されるなどのプラス評価をいただきました。同時に、意外性のある言葉や洒落やジョークをしゃべってほしいというやや難しい注文もいただきました。多様な言語・身体表現ができるロボットへと発展させることが求められているようです。
 
これらのご意見に基づいて、「シャンテ」くん君は成長しつつあります。

■ 2012年10月大学祭(三蔵祭)でショーを行いました
「シャンテ」君は、福山大学三蔵祭においても活躍しました。ここではロボット実演ショーを実施しました。来場者とメンタリズム(心理学ゲーム)やジャンケンなどで交流し、新しいダンスを披露しました。このショーを通じて、来場者にロボコミュニケーションを楽しんでもらい、その感想を伺いました。
 

 
 
来場者のちびっこに赤・青・黄色のボールを選んでもらい,その心理からボールの色をロボットが当てるというゲームです。「シャンテ」くんはその心理と色の関係を解説してくれます。
 

 

ロボットショーではアニメの主題歌にのってシャンテくんがダンスを披露してくれます。
このロボット実演ショー、おおむね好評のうちに終わりましたが、混雑時の待ち時間でお客さんを楽しませるような工夫が必要との指摘を受けました。このご意見は、レストランでのコミュニケーションにも活かせそうですね。忙しいと両手をあげて「まいったねー」のジェスチャーをしたり、パニックになると頭を抱えて困った様子を表すなどの動作が望まれるところです。


■...さらに、こんなこともやってみました。
 

 
ビジュアルも大切です。レストラン・ラコントルではクリスマス仕様(サンタ)、お正月仕様(タキシード)で登場しました。サンタのシャンテくんはプレゼントにチョコレートボールを振舞うお仕事もするように工夫をしました。これもなかなか好評でした。
 

 
ご協力いただいているNPO法人が主催する市場でも活躍をしてきました。2013年3月26-27日、4月16‐17日に広島市地下街シャレオ中央広場にて街頭実験を行いました。広島市中心街の長い地下街ですが、かなり遠方まで、シャンテくんの呼び込みの声が届いていたとのことです。女性のお客さんの中には、本当にいとおしく頭をなでてくださる方もおられ、機械と判っていても、「萌え」てしまうようです。

今後のロボコミュニケーションの研究として、工学部としてはロボットとしての性能向上、表現力向上、自動化などが課題となるでしょう。個人的には、高度な自律機能に興味があるところです。ロボットのキャラクター化の方法は人間文化学科、行動コーディングシステムによる分析は心理学科、映像データ分析はメディア情報文化学科と文系理系の垣根を越えて研究に取り組んでいく予定です。様々な学部学科のある福山大学ならではの研究として発展させたいと感じています。更にスマートなシャンテくんに成長するように、私もしっかり、協力したいと思います。


学長から二言:シャンテ君、歌って、踊って、しゃべって、推理して、さらに人を癒やして。。。どんどんスマートになっていきますね。ところで、電子・ロボット工学科は、このようなロボットの技術をさらに広く生活の隅々に生かしていくための技術者養成を目指して、来年度から日本初のスマートシステム学科に進化します。。。ご期待ください!