2017/03/20

福山大学研究ブランディングの取り組み~テクノロジーの融合が新しいアイデアを生み出す!~

こんにちは。学長室ブログメンバー海洋生物科学科のKenji♪ です。

3月16日(木)に「安全安心防災教育研究センター・グリーンサイエンス研究センター合同研究発表会 瀬戸内+Tech. ~新しいテクノロジーが切り拓く瀬戸内の里山・里海学~」が開催されました。生物工学科佐藤淳准教授からの報告です。

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こんにちは、生物工学科の佐藤です。

まずは、海洋生物科学科の山岸幸正 画伯(准教授)の才能が爆発している福山大学 里山・里海プロジェクトのイメージ図のお話から・・・。
瀬戸内の森、島、干潟、藻場、海における生き物をキャラクター化し、「瀬戸内の里山・里海学プロジェクト」のイメージとしました(納豆菌は生物工学科広岡和丈准教授作です)。今後、ことあるごとにこのイメージ図が出てくると思いますが、どこかで見かけたときには、「あ、福山大学!」っと気づいてほしいです。



さて、このプロジェクトにも関連する研究発表会が開催されました。その名も、「瀬戸内+Tech. ~新しいテクノロジーが切り拓く瀬戸内の里山・里海学~」。

演者には、人工知能(Artificial Intelligence)、自律水中ロボット(Autonomous Underwater Vehicle)、次世代シークエンサー(Next Generation Sequencer)、バイオロギング(Bio-logging)という最新のテクノロジーの原理と応用例、そしてそれらを用いた自身の研究や将来の夢などを語っていただき、最後の総合討論では、地域を活性化するためには、どこを足場にこれらのテクノロジーをどのように応用すると良いのかについて議論しました。

まずは趣旨説明として、全学で統一的な研究を行うためには、軸と重心が必要であることを、わたくし佐藤の方から説明させていただきました。1年間かけて全学の先生と話をして、軸である瀬戸内の里山・里海学の方向でまとめてきました。しかし、まだ足場や視点にバリエーションがあり、もっとギュッと重心をつくる必要があるようです。そのヒントがテクノロジーの融合にあるのではないかということで、テクノロジーに焦点を当てた発表会を計画しました。



少しだけ個々の研究発表を紹介させてください。

ディープラーニングが変えた人工知能~その原理と活用事例
演者: 池岡 宏 講師(情報工学科)
コンピュータに学習をさせて、いろいろなことを覚えてもらって、そして判断してもらう。こんな時代がきています。私たち人間がいらなくなる仕事も増えていくとか。人工知能の適用範囲は、税務会計から、金融取引、法廷、犯罪防止、社員管理、経営判断、創薬、農業、水産業、感情、芸術などなどなど、そこまでやってくれるかというほど非常に幅広いです。里山・里海プロジェクトでも水産業に関する研究で、この技術を活用していく予定です。
池岡講師(暗くてごめんなさい)

自律水中ロボットによる海底環境の観測とモデリング
演者: 内田博志 教授(機械システム工学科)
海中を自律的に動いて探索活動をする。そんな水中ロボットのお話です。ロボットの仕組みとともに、電波が届かず、地上ラジコン操作ができない海中で、どのように工夫をして自律水中ロボットを動かすシステムを作るかという説明がありました。今後、瀬戸内海の藻場(豊かな生物多様性を維持する機能を持ちます)に生息する魚類を観察するロボットを作る計画があります。そのほか、バーチャル水中散歩、フォトグラメトリーによる海中環境調査、海底の地形調査、海底の遺跡探しなど、夢とロマンの詰まったお話がたくさん聞けました。
内田教授

次世代シークエンサーで生物多様性を把握する
演者: 佐藤 淳 准教授(生物工学科)
近年、DNA塩基配列の決定技術の進歩はすさまじいものがあります。本学のシークエンサーで100年以上かかってようやく得られるデータを1日で得てしまう次世代シークエンサー。最近では、バケツ一杯の水の中に含まれる生物たちを一気に同定できる環境DNA分析、ワインの品質に影響を与えるバクテリアコミュニティを網羅的に調査できるメタゲノム分析、遺跡のように過去を語ってくれるゲノム情報を網羅的に用いた進化生物学分析、一塊のウンチから生態系のダイナミクスを垣間見させてくれるメタバーコーディング分析などなど、次世代シークエンサーは今まさに生物多様性分野の研究においてブレークスルーを引き起こしています。瀬戸内の里山・里海の生態系を解読するために現在も少しずつ利用しているところです。
[瀬戸内の里山・里海生態系プロジェクトはこちら]
佐藤准教授

バイオロギングで瀬戸内の環境を探る
演者: 渡辺伸一 准教授(海洋生物科学科)
様々なデータロガーを動物にとりつけることで、我々ではなく「動物にどのように見えるのか?」という動物の知覚世界を見ることのできるバイオロギング。我々が見ることのできない場所での動物の行動を知ることができ、これまでの知見を書き換え続けています。発表では、広島市 太田川におけるクロダイ(チヌ)や瀬戸内海のオオミズナギドリの採餌行動を中心とした行動分析について、映像を交えながら楽しい紹介がありました。また、オオミズナギドリを利用したバイオロギングにより海上の気象予報までできるということですから驚きです。
[瀬戸内の里山・里海生態系プロジェクトはこちら]
渡辺准教授
総合討論
研究の重心をどこに置くのかという議論をさせていただきました。経済学部、人間文化学部、工学部、生命工学部、薬学部の非常に幅広い専門家が参加するプロジェクトですので、簡単には答えは見つからないのですが、一つ足場を作り、今回の4つの新しいテクノロジーを中心に様々なテクノロジーを利用し融合しながら研究を進めることに意味はありそうです。今後のプロジェクトの展開を是非ご期待ください。大切なのはこうした議論を続けることです。福山大学には、5学部の先生がすぐに集まり、建設的な議論ができるような柔軟で、オープンで、寛容な雰囲気があると思います。是非、このチャンスに皆さんで大きな仕事がしたいですね。
スマートシステム学科 仲嶋教授
生物工学科 秦野教授
最後に、今回の研究発表会は、大学院 工学研究科のFDを兼ねて開催しました。ちょうど大学院に進学する学生も参加しており、教員の研究に対する熱が伝わり良かったと思います。誤解を恐れずに言えば、研究は教育です。福山大学の研究力が学生にも伝わり、そして研究成果も育成した人材も、長期にわたり地域に貢献し続けることができることを強く願っています。

学長から一言:こういう研究活動が盛んになって、本当にうれしいですねッ!!!大学の教育というのは、教員がワクワクしながら研究し、そのワクワク感が学生指導でも授業でも伝わらないと。。。ねッ!!!