2015/08/22

文化フォーラム2015(第2回)・井伏鱒二『さざなみ軍記』-瀬戸内の平家伝説に思いを馳せる

人間文化学科のSです。こんにちは。

今回は、「文化フォーラム2015」第2回の模様をレポートします。
キーワードは「平家伝説」、担当講師は大学教育センターの竹盛講師です。
以下、竹盛講師からのレポートです(終わりにインフォメーションあり)。

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「さざなみ軍記」と平家伝説をめぐって  

文化フォーラム2015、第2回目のテーマは「『さざなみ軍記』と平家伝説」です。今回も40人近くの参加者です。なかには井伏鱒二全集をお持ちの方もおられて、皆さんの熱気を感じながら、以下のようなことをお話ししました。

 

平家物語があります。平家谷をはじめとする沼隈半島にも一つの平家物語があり、これを基層に置いて生まれた井伏鱒二の「さざなみ軍記」もまた、一つの平家物語であると言えるのではないでしょうか。

「さざなみ軍記」は、平家の少年公達、平知章(平知盛の子)の日記という体裁の小説です。これが、なかなかに読みづらい小説です。人物関係と時間空間認識においてつかみづらいところがあって、私たち読者は主人公とともに漂うことになるのです。

この漂流のなかで私の疑問は膨らんできます。小説のあの舞台となる場所はどこであるのか、作品執筆の動機がどういうところにあったのか、探索してみようという思いは募り、「さざなみ軍記」に繋がると思われる土地を、私は訪れてみるのでした。

フィールドワークは、ふるさと福山の沼隈半島にはじまり、山口周防の柳井へと展開し、「さざなみ軍記」の深い「地層」に辿り着くことができたと思っています。

実際に足を運び、その空間に立ってみると、実感することがあるのです。そして、これらのすべてが、瀬戸内の海でつながっていることに気づくのでした。

平家物語がそうであるように、井伏の「さざなみ軍記」もまた、この瀬戸内の海の上に展開される平家興亡の軍記物であるのですが、それを書き綴るという営みのなかから、そこに語り出された一つ一つの言葉の鼓動のなかから、新たな可能性が生み出されているのだと思うのです。

「さざなみ軍記」を読み、そのふるさと瀬戸内の海のさざ波をあらためて見つめ直してみるならば、井伏の文学はより身近なものとなって、新たな愉しみとなるのです。

これが、私のお話しの概要です。

次回9月26日には、いよいよ沼隈の平家谷に出かけます。すでに予約は満席となっています。皆さんで、特製の平家弁当をいただくことになります。


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以下、インフォメーションです。

(1) 第3回フィールドワークはすでにバス満席となり、申込を締め切っています。
(2) 第4回は、開催時間を午後(13:00~14:30)に変更となりました。
(3) 第5回の開催時間は、10:30~12:00 です。


学長から一言:イヤー、面白いですね-。。。この夏バテの身には、「瀬戸内のさざなみ」という言葉が、実に心地よく、身体の中を流れます。。。それにしても次回のフィールドワークはすでに予約でいっぱい???大学の行う行事としては珍し~い!?!そういうことなら、いいよ参加したいですねッ!