人間卯文化学部 文化フェスタは、8月23日(土)12:00~16:00、エフピコRIM9Fのスカイホールで行われました。今回のテーマは、「おやつランド」と銘打って、備後のおやつの過去・現在・未来を語るというものです。今回のイベントは、テーマの決定から実施まで、人間文化学科とメディア情報文化学科の学生が主体となって行いました。食をテーマにする研究発表(メディア情報文化学科の動画によるおやつ紹介、人間文化学科の地域のおやつアンケート調査報告、心理学科の食の心理研究展示コーナー)、現代の活動紹介(油木高校産業ビジネス科の発表)、地域のお菓子屋さんの講演(勉強堂 社長 門田治己氏)などを実施、来場者参加型で、学生と市民の方々との交流を目標に、新しい会場を使用し、地域のお菓子屋さんの委託販売コーナー、イベント顧問の佐藤和博氏(株式会社 COM.PASS社長 本学非常勤講師)のはったい粉試食コーナーを含むイートインコーナーも設けました。最後は、子供たち限定の「菓子まき」を実施、夏休み最後の思い出を提供しました。
初めて行った委託販売を始め、学生にとっては能力を超えることに挑戦し、失敗も多かった今回の文化フェスタでしたが、学生に残ったものは、反省とともに今後はこうしたいという「意欲」、何かをしたいという「態度」です。これは授業では体験することができない貴重なことだったと思います。来年度からは、本イベントは、人間文化学科の必修科目「企画文化実習」(担当 株式会社COM.PASS社長 佐藤和博氏)に引き継がれます。
以下に当日の実施状況を紹介します。
メインステージの行事
プロローグ─「ご当地Oh!やつ」→土地には土地のおやつがある。
学生扮する「おやつハンター」 |
先ずメインステージでは、最初に他県のおやつを紹介する「ご当地Oh!やつ」を行いました。これは、メディア情報文化学科の学生が担当、学生扮する「おやつハンター」が未来からやって来て学内で他県出身者をハントするという設定で、その場面を前もって収録した動画で紹介するとともに、ステージに「おやつハンター」と他県出身者が現れてステージで掛け合いをしながら、おやつを実際に会場の人とともに試食したり、調理実演したりしながら紹介しました。一つは岡山県出身の学生が紹介する蒜山高原のジャージー牛乳入り「高原ブッセ」で、会場の子供さんが試食、「おいしい」と答えてくれました。もう一つは大分県出身の人間文化学科教員、脇忠之講師が紹介する伝統的おやつ「やせうま」です。これは、小麦粉を水で練って細長く引きちぎって茹でたものにきな粉をまぶしたもので、形が馬に似ているところから「やせうま」と呼ばれているとのことです。脇さんは、その練り方にこつがあるというお母さんの話を紹介し、その場で調理された「やせうま」を試食しました。大分県では、祭りなどの特別なときに食べるほか、現在はレストランや和菓子屋でも売られており、給食にも出るという大分県の一押しのソウルフードでした。
問題提起─「備後のおやつタイムトラベルその1」おやつとは? 備後のおやつとは?
次は、備後の伝統的おやつを紹介するコーナーで、人間文化学科の学生が担当、西部市民センターの講座受講者116人(50代以上)に子どもの頃のおやつをアンケート調査してその結果を報告しました。おやつについての関心が2012年から目立ってきたこと、それは不安定な時代社会を克服する上で浮上してきたものであり、おやつはコミュニケーションを仲介するもの、不安を解消するものとして重要性が増していることを述べました。アンケートは、「子供の頃どのようなおやつを食べていたか」、「どのぐらいの頻度で食べていたか」、「おやつはどのような存在だったか」「今どのようなおやつを食べているか」という4つの項目で行いました。子供の頃食べていたおやつについて分析すると、「山のおやつ」「畑のおやつ」「加工品、店で買うおやつ」の三つに分類され、60代以上の人では子供の頃、「山のおやつ」と「畑のおやつ」が半分以上占めていることが報告されました。その内容についても特に「山のおやつ」は豊富であり、「いたどり」「すいば」「はちのこ」など、現在ではほとんど食べられていないものが多く、興味深い結果となりました。
また、「畑のおやつ」の中では「さとうきび」が地域の特色を示すものとして報告されました。「おやつはどんな存在か」という質問には、「うれしかった」「ごちそうだった」という回答がほとんどを占めました。これらのことから、戦前・終戦後のおやつ行動の特徴は、山や野原で友だちと遊ぶ中で野草や虫を取ったり、また畑や庭になっているものをもいだり、といった収穫して食べ、それを楽しむというアクティブなおやつ行動がみえてきました。これに対して「現在どんなものを食べているか」という質問には「ケーキ」、「クッキー」、「まんじゅう」という店で購入するおやつが大半を占め、人々の生活が消費生活へと移行したことが如実に見えてきました。これからのおやつをどう考えるべきか、会の後半への問題提起を行いました。
現代の若者の活動→油木高校産業ビジネス科 「ミツバチプロジェクト」について発表
油木高校産業ビジネス科の養蜂総合活動は、ミツバチを育て、蜂蜜を製造し、それを使用したスイーツを開発するという、現代の新たな「おやつ」活動の先端を行く活動です。
宮本紀子先生を代表とする本プロジェクトは、文部省後援「観光甲子園」でグランプリ・観光庁長官賞を受賞したすばらしい活動です。本プロジェクトは、地域産業活性化を目指して、花粉交配によって農業生産を手助けするとともに、蜂蜜やローヤルゼリー,蜜蝋などを生産するミツバチに注目し、授業の一環として、世界中で数が激減している貴重なミツバチ(和バチ)を育てる方法を研究、蜂蜜を製造するとともに、それを生産する過程そのものを一つのビジネスモデルとして確立させる総合活動であるところに特徴があります。その過程で、間伐材を使って巣蜜専用巣枠を考案、耕作放棄地にレンゲを植え、育てた蜂で蜜を集めるとともに、花を観光に活かすこと、さらにその蜂蜜をホテルとの連携で新しい料理やエステサービスを開発するなど、様々に展開しています。
当日の朝瓶詰めをした新鮮な蜂蜜 |
今回の発表は3名の生徒さんで行われました。そのテーマは「広がる交流」で、貴重なミツバチの育て方を他の地域から教えて欲しいという依頼が相次ぎ、それに答えて高校生が他地域にそれを教えるという活動をしていること、また東日本代震災の被災地にも、被災からの復興を願ってミツバチを届けたことが紹介されました。さらに、今後はミツバチの飼育方法を本にまとめて出版する予定であることが報告されました。
この活動は、環境共生活動という大きな規模の総合活動であり、おやつ活動はその一部にリンクしていることになります。我々の問題提起にすばらしい答えを与えてくれました。それは、「未来のおやつ」の一つの形であり、目を開かされました。会場の販売コーナーで、貴重な蜂蜜とそれを使ったシフォンケーキが販売されました。大変香りのいい金色の蜂蜜です。シフォンケーキ限定30本は当日売り切れました。
エピローグ─「備後のおやつタイムトラベルその2」勉強堂社長さんのお話「未来のおやつ」
未来のおやつは?? |
地域のお菓子屋さんとして、勉強堂の門田治己社長に「未来のおやつ」と題してお話をしていただきました。そのお話は、これまでの発表をまとめる内容でした。戦前は、甘いものが大変貴重で、砂糖を使ったお菓子は、結婚式、祭り、法事など特別なときに出される「ごちそうおかし」であり、それはみんなで分け合って食べるものだったというお話から始まりました。砂糖を使ったお菓子はめったに食べられないものであったので、普段はそれに代わるようなもので補っていたということです。山や畑のおやつがこれに当たるでしょう。
現在は、消費生活の中で、様々なおやつが購入されて食べられています。その中でも、お菓子はやはり特別な日の特別な食べ物で、お正月、お雛様、子供の日、バレンタインデイ、クリスマス、結婚式の日など、いろいろ記念の日を決めて食べられています。
未来のおやつとして、社長さんが示されたのは、ファッション性が高く、おしゃれなものがこれからのおやつになるだろうとのことでした。これからも、新たな記念日を決めて、たとえば今日は地域のお菓子を食べる日、などおやつを通じて、新たなライフスタイルの提案を行っていきたいとのことでした。
地域のお菓子販売コーナー
学生がセレクトした地域自慢のお菓子を販売しました。
勉強堂→麦っこ栗っこ
エルブラン松月堂→げた踊り 藺草最中
マロンドール→仙酔仙人 瀬戸田レモンケーキ ローズヒップキャンディ
大和屋製パン工場→給食パンラスク
福見堂商店→アップルパイ 備後絣ようかん 梅干ようかん
ゑびす家→たこせん たこもみじ
イートインコーナー
「佐藤さんのはったい粉らんど」→昔なつかしいはったい粉(麦粉)を、セルフサービスでお湯で練って試食するコーナー。一番人気のコーナーで、食べたことのない若者も、子供も、昔を懐かしむ高齢者の方も、等しく楽しそうに割り箸で練りながら話がはずんでいました。
最後は「菓子まき」で締めくくりました。
学長から一言:学生の皆さん、裏方として支援した教員の皆さん、お疲れ様でした! 協力してくださった地域の皆さん、ありがとうございました! 参加してくれたおちびちゃん達、おいしいお菓子が食べられて良かったね!
学長から一言:学生の皆さん、裏方として支援した教員の皆さん、お疲れ様でした! 協力してくださった地域の皆さん、ありがとうございました! 参加してくれたおちびちゃん達、おいしいお菓子が食べられて良かったね!