2017/05/19

『君の名は。』の作画監督、安藤雅司氏による福山大学教養講座!

みなさん、こんにちは。学長室ブログメンバーのメディア・映像学科、阿部です。

5月12日に平成29年度第2回教養講座が開催されました。今回は、スタジオジブリ作品をはじめ、2016年の大ヒット作品『君の名は。』の作画監督など、アニメーション制作の第一線で活躍されているアニメーターの安藤雅司さんをお招きし、アニメーション制作の機微についてお話いただきました。

本会は対談形式で進められ、メディア・映像学科の中嶋教授が聞き手を務めました。


はじめに、実写映像の制作の進め方と、アニメーションの制作の現場で起こっていることの違いについてのお話があり、アニメーションはとにかく描かなければならないのだということを何度も強調されていました。

実写では、絵コンテを通じて役者やカメラマンと撮りたい映像を共有すると、それぞれがその絵に向かって「自動的」に動き、映像となっていくわけですが、アニメーションでは、「自動的」には映像は制作されません。キャラクターの表情や動作、インポーズするかどうかなどを前もって設計しておく必要があります。


安藤氏のお話によると、キャラクターの自然な動きを作っていく際に、1/12秒~1/8秒まで細分化して、カットとカットのつながりや、どこまで背景を描き切るかなどを考えながら、絵を描いてるということでした。それは、ものの質量であるとか、風や水面の動き方など、あらゆる物質のあり方を観察し、時に省略しながら絵を仕上げていくことです。事前の設計がいかに大切であるかが、ひしひしと伝わってきます。


お話のなかで、瀬戸内の島が舞台となった映画『ももへの手紙』のキャラクター設計図も見せていただきましたが、「主人公がしゃっくりをしたらどうなるか」といった作中にない設定までも、事前に作画しておいたりするのだそうです。一つの作品が、多くのアニメーターの方々との共同作業で出来上がっていくわけですから、事前の設計段階が何よりも大事なのですね。


運動現象の捉え方というところでは、宮崎駿監督の「(アニメーターの仕事は)世界の秘密をのぞきみる仕事」という言葉も引用されていました。自然な動きを描きとめるための試行を重ねながら、「この構図に秘訣があったのか」と気づくときがあるのだそうです。

私が専門とするメディア論には、メディアによって私たちは「技術の眼」を獲得する、つまり、人間の感覚器だけではとらえきれない「瞬間」をメディア技術によって体得するという考え方があります。1時間半のお話を伺いながら、安藤氏は一体どれだけの「アニメーターの眼」をもっていらっしゃるのかと、終始驚かされっぱなしでありました。


お話の後のQ&Aでは、学生たちからマンガ原作の作品とアニメーション制作の関係性などについての質問があがり、まだまだ終わってほしくない雰囲気のなかでの終演となりました。安藤氏は広島県府中市ご出身ということもあり、学生たちも私たちもとても親近感をもちつつ、卓越した技術とご経験に基づいたお話にたくさんの刺激を受けることができました。

安藤さん、お忙しいところ本学までお越しいただきまして、本当にありがとうございました。今後のご活躍を心から楽しみにしております。

<追記>

福山大学での講座の終了後には、今回の聞き手を務めた中嶋教授が所属するメディア・映像学科の学生たちが控え室に伺いました。午後の福山平成大学への移動の合間のお忙しい中にも拘わらず、作品や制作に関わる学生からのさらなる質問に答えていただく・・・だけでなく、絵を描く様子まで見せていただきました。学生の緊張と興奮が伝わるでしょうか。安藤さん、本当にありがとうございました。

学長から一言:あり得ない話しにリアリティーを感じさせて見る人の感動を呼ぶのは、すさまじい職人魂とどこまでも突き詰める職人技と思いました。。。感動!!!安藤雅司様、ありがとうございました!