2013/12/14

地域と世界をつなぐ研究~バラのパン!!

こんにちは。ブログスタッフの生物工学科 佐藤です。

地域の中に可能性の種を見出し、発芽させ、世界が驚くような大きな花を咲かせることは研究者としての大学教員の最も大きな役割です。

もし何気ない日常の中に大きな発見の可能性があるとしたら、もしそれが私たちの生活を豊かにしてくれるのなら、そしてもしそんな大きな発見へ導いてくれる先生がその地域の大学にいたら、学んでみたいと思いませんか?

2013年12月12日(木)福山大学リレー講座で生物工学科の久冨泰資教授が講演を行いました。今回はそのレポートです。題目は「酵母を探って、より身近に!」です。

講演前の久冨教授

酵母は単細胞の生きもので、その点、バクテリアやアーキアといった原核生物と似ていますが、細胞の中に核を持つという点で大きく異なり、むしろ私たち人間の一つ一つの細胞と似ています。酵母は私たちと同じ真核生物なのです。

私たちは酸素呼吸を行い栄養分を分解することでエネルギーを得ています。ところが、酵母は酸素呼吸によるエネルギーの獲得に加えて、酸素がない状態での「発酵」という方法でもエネルギーを得ることができます。酵母が生きるために行う発酵の副産物としてアルコールや二酸化炭素が生じ、それらを私たちがお酒やパンを作るために利用しているわけです。

身近な発酵
一口に酵母と言っても1種類ではなく、なんと1500種もいるそうです。そしてそれぞれの酵母には個性があり、発酵の能力一つをとっても、ものすごい多様性があるのだとか。久冨教授は実際に屋久島などにおけるフィールド調査で酵母を収集し、遺伝解析などを通して、酵母の多様性が生じた理由を進化学的な観点から明らかにしてきました。

染色体の多型から酵母の遺伝的な個性を調べる方法

さて、その個性は実は異なる地域の間でも見られるようです。つまり、福山の地にも発酵能力の優れた酵母がいるかもしれません。あなたの身の周りにもすごい酵母がいるかもしれないんですよ!わくわくしませんか。

さくらんぼ、ブドウなどから酵母を分離

福山と言えばバラ。バラの蜜に含まれる栄養分を求めて福山の酵母たちはわらわらとバラに集まり住みついています。「100万本のバラのまち福山」にはどれだけ多くの酵母がいるのか。。。久冨教授は、そんな酵母の中から発酵能力の高い酵母を見出すことで、福山バラ酵母のブランディングを試みています。

福山バラ酵母のブランディング

実際に福山バラ酵母の中から非常に発酵能力の高い酵母を9株見つけ、パンを焼いてみたそうです。ある酵母からは「香りが甘く、生地がとてもやわらかいパン」、ある酵母からは「しっとりとして、もちもちしたパン」、ある酵母からは「焼き上がりの香りが強く生地がやわらかいパン」ができたとか。福山バラ酵母の個性がパンの個性となって私たちの世界により身近になったわけです。


久冨教授と一緒に地域の秘宝を探る旅に出てみるのはいかがでしょうか? 世界が驚く酵母を発見することができるかもしれません。そして研究の過程で出来上がったパンの評価には是非、私を使ってくださいね。


学長から一言:上の写真ではちょっとわかりにくいのですが、バラの種類によってパンを切ったときの生地の色まで違っていて、画面から異なった香りがだだよってくるようでした。。。もちもち感なんかも違うみたいです。。。興味つきない講演でした!