2016/08/08

大学生の地域調査(続編):税務会計学科のアクティブラーニングの実践

学長室ブログメンバーの張楓(経済学部税務会計学科)です。このたび、税務会計学科では「地域調査」の授業の一環として第2回目の工場見学を実施しました。以下では、その様子と学生の感想を紹介します。
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「地域調査」は経済学部税務会計学科において2012年度から開講されており、今年で5年目となります。その目的は、福山・尾道・府中・三原を中心とする備後地域の経済・社会の過去・現在・未来に関する疑問を、学生自身による学外訪問調査により解決することにあります。学生を主体とする演習形式をとり、事前学習や訪問調査、発表、討論を実施することにより、地域への関心を高め、専門科目への橋渡しとしても期待されています。
2014年度後期から私が担当することとなって以来、クニヒロ株式会社、永和国土環境株式会社、株式会社シギヤ精機製作所などを調査の対象としてとりあげてきました。今年度2016年度前期の「地域調査」では511日に最初の工場見学として「高級婚礼家具」産地として知られる府中で家具製造を手掛けてきている高橋工芸(株)を訪問しました。

今回は615日に実施した株式会社オオニシ見学の様子と学生の感想をご紹介します。今回は前回と同様、4名の学生(うち3名は留学生)が工場見学に参加しました。
(福山工場、中央は取締役営業部長)



・株式会社オオニシの名物ロングセラー
「ブロイラー(若鶏の手羽)」と「とり皮」(写真)。見学の帰り際、お土産としてそれぞれ10袋を有難くいただきました。それぞれ1人4袋ずつ分けて持ち帰ってもらったが、味はいかがでしたか。私の小学校4年生の息子は大好きだと言ってハマったようです。その後、駄菓子屋さんではなかなか見つからなくて困っています(笑)。
「ブロイラー」
「とり皮」
・株式会社オオニシの創業
本社は尾道市三軒家町にあります。1973年に尾道にある鰹節メーカーの(株)まるじょう(明治17年創業)から海産物卸会社として独立・創業し、酒屋や駄菓子屋への卸売を主要業務としていました。


・ロングセラーの「ブロイラー」の販路拡大


 創業直後に塩味とガーリック風味の「ブロイラー」が開発されて以来、老若男女を問わずおやつとしてもお酒のつまみとしても幅広い愛好者を獲得してきています。主に駄菓子屋で販売されてきましたが、尾道・福山・三原・呉といった広島県瀬戸内海沿岸地域が主だった販路は1990年代初頭以降、香川県高松市にある駄菓子・玩具の全国チェーン「夢や」のフランチャイズの全国展開を契機に急速に拡大していきました。

食品加工設備(業務終了後の撮影)
・原料手羽先の仕入先
 2000年代初頭まで中国主体でしたが、鳥インフルエンザで仕入先をブラジルに転換して、現在、ブラジル8割と国産2割となっています。

・一日当たり使用量
 手羽先:200300キロ(40005000本)
 鳥皮:150キロ
大西取締役営業部長へのインタビュー
・株式会社オオニシの特徴:典型的なニッチ企業
 大手食品メーカーが手出しにくい部分(たとえば人手がかかるもの、大量生産できないもの、原材料不安定なもの)に対して、中小企業がもつ機動性や柔軟性を活かして積極的に参入しています。

・企業の社会的責任と今後の目標
  社会貢献があってはじめて会社と呼べると考え、社会や従業員への利益還元の推進にとどまらず、コミュニケーションを通じて社会との交流、接点を持つことを最大の喜びとして尾道市内において小売店の開店を目指しています。

大西取締役営業部長へのインタビュー
・学生の感想
(1)オオニシ社はポジティブに経営展開をしている企業です。たとえば、小売店の開店や海外出店を目指しているところ非常に印象に残っています。今までオオニシ社について、ロングセラーの「ブロイラー」は知っていても、それが尾道のオオニシ社が作ったものだとは知りませんでした。またオオニシ社は、誰も手を付けない物を手掛けるニッチ企業でとても堅実な経営をしている素晴らしい企業だと感じました。

(2)最も印象深いのは工場の作業環境の良さです。食品製造企業にとって最も重要なのが食品の衛生と安全性であることを考えると、中国のほうは多くの問題点を抱えているように思います。近年、中国では食品の安全問題に関する事件が何件も起こってしまいました。一方、オオニシの工場は想像以上に綺麗でした。工場は二つの作業ブロックから構成されています。一つは原材料の解凍・下地・揚げ・油切り・殺菌の加工部屋で、もう一つは出来た食品を分類して真空パックする部屋です。作業時に自分の靴を履くことが禁止されています。それから、手洗いやマスク装着が義務付けられています。このような厳しいルールは、食品の衛生と安全性を保証するための必要不可欠の第一歩だと思います。

(3)中国でも、オオニシのような食品製造業を経営する中小企業がたくさんありますが、オオニシと比べて、ひらきが大きいと言わざるを得ません。日中両国ではともにたくさんの中小企業があるにもかかわらず、企業の競争力に大きな開きがあり、とくに食品製造業でのギャップが大きいのではないかと思われます。中国では近年、食品安全問題が頻繁に発生しています。2014年に発生した福喜事件契機となって食品安全問題への人々の関心が一気に高まりました。上海福喜食品は上海の大手企業として知られていますが、それでも、製造卸した食肉が消費期限切れであったのが発覚しました。その原因は企業側が法律の規定と基準要求を無視して、企業の従業員が職人さんとしての品行を失ったところにあるのではないかと思います。オオニシ社に多くのヒントを得たように思います。

・備後地域にはユニークな企業が多く存在しています。それぞれの存在をどのように歴史的・構造的にとらえていくのかは企業経営分析の醍醐味の1つでもあります。税務会計学科ではそれを専門とする優れた多くの研究者が勢ぞろいしています。

8月21日開催予定のオープンキャンパスで税務会計学科では企業経営や会計簿記、税務をテーマとするイベントが予定されています。ちなみに、私が「縁の下の力持ちとは何か」について備後地域経済に関する最新の研究成果を踏まえながら、講義ます。ぜひお見逃しなく。


学長から一言:地元の優良なニッチ企業の訪問、というすばらしい授業ですねッ。。。受講生の少ないのが残念ですが、中国からの留学生にとってもかけがえのない実地の勉強になったようで、よかったです!